感染症の確率

インフルエンザが完全に流行期に入りました。

感染症の周りへの影響を考える時にまず一番大事なのは症状の強さです。

高熱である、咳がひどい、下痢の回数が多いなど症状が強い場合は原因のウイルスや菌が何であれ周囲への攻撃力は強いと考えられます。

全ての症状はうつるという前提で行動し、どの季節でもどんな感染症でも症状が強い時はしっかりと家に引きこもってください。

 

さて、感染症の中には症状が軽くても感染力が強烈で、そして非常に大事なファクターとして「大人すらえげつなく巻き込む(つまり社会の運営や経済に影響する)」からという理由から特別扱いするべき感染症があります。

「咳・鼻水のかぜのウイルス」の中ではインフルエンザ、「嘔吐・下痢のかぜのウイルス」の中ではノロウイルスがその代表格です。

いずれも冬場に毎年必ず大流行するウイルスで、社会全体に大きな損失を与えています。

 

一般論として「ある特定の症状が出た時に、実際にその感染症であるかどうか」の確率は周囲の流行にかなり依存します。

真夏に40度出ても、誰もインフルエンザの心配なんかしません。

しかし学級閉鎖寸前のクラスにいる子が、夜だけ38度あり翌朝は解熱していた場合インフルエンザである可能性は非常に高いと言えます。

日常の診療の中で、検査キッドが診断の決め手になるというお母さん方からの期待が過剰に高いのを感じます。

検査がまるで診断やタミフルなどをもらうために不可欠な辛い作業のように誤解している方は未だに多くいらっしゃいます。

検査キッドは上手に用いれば有用ではありますが、我々医師が最終ジャッジ、つまり診断を下すために使用する道具の一つにすぎません。

いいタイミングで検査してもせいぜい正確性は90%程度です。

例えば兄弟二人がインフルエンザで休んでいる最中にそれ以外の家族が40度で真っ赤な顔をしている時、検査するまでもなくインフルエンザという診断が下されるでしょう。

適切な問診や診察をした状態での私の診断力は検査キッドの正確性をずいぶん上回ると考えていただいて差し支えありません。

 

ところで流行期に一番難しいのは「インフルエンザではない、ノロではない」というジャッジを下すことです。

周りがその感染症だらけの時は症状が軽くても場合によっては複数回診察をして、検査をして、完全に否定するためには相当なエネルギーを要します。

親御さんにお願いしたいのは、流行期に入ったら、症状が強くなくても「違う」という確信が出るまで家庭内でも警戒を解かず、ましてやうかつに登園や登校をさせないで、ということです。

夜に熱が出た、嘔吐をしてちょっと食欲がないなど、インフルエンザやノロかもしれないという症状があった時は、とりあえず一旦立ち止まってください。

その上で「登園しない・登校しない」=「すぐに病院に行かなければならない」ではないことも思い出してください。

熱出てすぐに受診、嘔吐してすぐに受診というのは徒労に終わることが多いですから、状態に余裕があるときは「慎重に様子をみる」という選択をした上でしかるべきタイミング(発熱半日から24時間経ってから、あるいは嘔吐が6時間〜半日続く時)で受診をすることで非常に利益の多い診察を受けることができるでしょう。

 

子育てその34 サンタさん

サンタさんは寒い寒い北の国に住むと言われています。

特別の力を持っていますから、日本のような遠い国で生まれた子供たちの事もちゃんと知っています。

しかし実際に家の場所まで把握してプレゼントを届けるには流石のサンタさんと言えど生まれてから大体2、3年はかかるようです(くぼこどもクリニック調べ)。

二人目や三人目になるとサンタさんも家を知っていますから、赤ちゃんの頃から贈り物が枕元に届くという寸法です。

いつも大声をあげながら厳しく子育てをしている我々親からみるとサンタさんはとても心優しく、いやちょっと甘すぎるのではと感じる年も多々あります。

今年など我が息子達はとてもとてもプレゼントがもらえるとは思えない「お利口じゃなさ」で、「パパはサンタさん来ないちゃうかなと思うで。」と言っていましたが、結局甘々のサンタさんは贈り物を下さいました。

また、小学校高学年くらいになるとサンタさんは他の家で新たに生まれた小さな子供達へのプレゼント配りに忙しくなるため、お父さんやお母さんにその仕事を託して家を訪れることはなくなると言われています。

我が家は長男が小3ですが、今年もまだ私への引き継ぎは行われませんでした。

そろそろかなと気を引き締めて来年のクリスマスのことをあれこれ想像しながら、年は暮れていきます。

皆様、どうぞよいお年を。

索引

熱・解熱剤

2013年2月(熱の意義、解熱剤の使い方)、2014年7月(熱の時のクーリング、冷却シート)

鼻水・かぜ

2012年11月(鼻水との戦い、かぜとは)、2014年10月(咳止めテープ、風邪で病院に行く理由)、2015年2月(クループ)、2015年6月(風邪のイメージ~台風になぞらえて)

インフルエンザ

2014年1月

嘔吐・下痢・ノロウイルス

2013年12月(イメージ、対策)、2014年11月(ノロ~登園の基準を中心に)、2015年10月(受診の目安)

予防接種

2012年12月(意義、スケジュール)、2014年5月(同時接種、タイミング)、2014年9月(インフルエンザワクチン)、2015年11月(より良く生きるためには)

救急の上手な受診の仕方、登園許可証

2014年12月(救急受診の目安)、2015年6月(登園・登校許可証)

免疫・アレルギー

2013年10月2013年11月(免疫とは、アレルギーとは)、2014年8月(アレルギー検査)

溶連菌

2013年1月

川崎病

2015年3月

感染症の対策

ノロウイルスによる胃腸炎やインフルエンザをはじめ、症状の強い感染症の多い寒い季節に入りました。

症状が強い、というのはそのまま周囲への感染力が強いということを意味します。

「しんどそうな症状の中でうつらないものはまずない」という原則を常に忘れないようにしましょう。

したがって感染症の考え方で大事なことの一つに「家族全滅を避ける」というテーマをあげることができます。

感染症はかかってしまって症状が出始めた時から可哀想な被害者であるわけですが、忘れてはいけないのはその瞬間から加害者になってしまっているという事実です。

流行の時期にお子さんが嘔吐をしたり高熱が出始めてしまったときに必ずしもすぐに病院に駆け込まないといけないことは多くはないでしょう。

しかしおうちでしばらく様子を見ている間、つい我が子を心配するあまり、その可愛い我が子がすでに周りに感染症を撒き散らす感染源になっていることを病院に受診するまでうっかりしてしまっているお母さん、お父さんをよくみます。

しっかりお子さんを観察してあげるとともに手洗いや手袋にマスク、加湿器など御自分達がやられない努力も是非しっかりやりましょう。

病院、特に救急の待合室は感染症あふれる空間です。

そこでわざわざ両親そろって時間を過ごすのは感染症予防の観点からは得策でありません。

そのようなところにも想像が働くと家族全滅のリスクはずいぶん減らすことができるでしょう。

どうでもいいことその21 人類最大の発明

皆さんご存知とは思いますが、真の人類最大の発明、それはパッチ(モモヒキとも言う)であります。

芯から冷えるこれからの時期、パッチが無かった時代の人類が一体どのように生き延びていたのか私には想像がつきません。

いつもそばにいて温もりをくれるパッチ。

でも誰にもばれないパッチ。

ところがお風呂上がりによいこらしょっとパッチに足を通す私を見る地球唯一ので大人である妻は、「なんか、見てたら無性に哀愁感じるわ。」とつぶやくのでした。

 

一方、年中の次男はさらちゃんというご近所のお友達と同じバス停から朝乗っていくのですが、時々顔を出すお父さんは妻曰くいつもとてもオシャレさんだそうです。

しかーし、いかに外っ面がオシャレでもやっぱりパッチはこっそり履いているだろうと私は思うのです。

「穴あきジーンズ履いてはるのに、パッチ履いてるわけないやん(笑)。」という妻からの指摘に、こんなに寒い中オシャレするって大変なんだなあと思うのでした。

2018年1月より、火曜日午後の休診について

明日(11月30日)の診察終了後、出産のため離職する受付スタッフの送別会を行う予定です。

春に健康上の理由で離職したスタッフ達もお祝いに駆けつけてくれることになっています。

そんなお祝いムードの最中、昨日看護師スタッフの御家族が救急搬送→入院するというニュースが青天の霹靂で舞い込んできてしまいました。

一番心配な事態は幸い免れたものの、サポートのため急遽その看護師スタッフが年内で離職せざるを得ないことになりました。

 

2017年はクリニックにとって激動の1年でした。

この二人も含めると、

受付二人→病気のため、受付一人→家族の病気のサポートのため、上記受付スタッフ→出産のため、上記看護師スタッフ→家族の病気のサポートのため、看護師一人→出産のため、看護師一人→結婚し、遠方に引っ越すためと、うれしい理由も含めて、愛するスタッフを7人も送り出すという予想外の連続。

逆に新たにクリニックを盛り上げてくれる受付スタッフ達にも恵まれ、とても楽しい一年でもありました。

ただ看護師スタッフは中々見つからず、離職に伴いうちのエース田中さんには本当に負担をかけてしまい院長として力量不足を感じ申し訳なく思っています(彼女は引き続きクリニックにいます)。

クリニックの顔として、いつもにこやかに、大変な時にも不平一つ言わず支えてくれてきた彼女はお母さん方の信頼も厚いだろうと確信しています。

もちろん新たな人材を募集しながらも、残った受付スタッフ、看護助手、田中さんでしっかりと診療を行っていくにあたり、熟考の末やはり当面診察枠を縮小せざるを得ないという結論に至りました。

地域の皆様にはご迷惑をおかけして本当に申し訳ないのですが、2018年1月より、火曜日の午後の診療はマンパワーの限界から閉じさせて頂きます。

何卒、ご理解を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

情報の取捨選択 マスコミの功罪②

医学の世界でも、不適切な医療を行っていた病院の実態がマスコミによって明らかになったという例も多々あります。

逆に、日本脳炎ワクチンはこの冤罪による容疑をかけられた代表例です。

一時、日本脳炎ワクチンの接種後にADEMという特殊なアレルギー性脳炎が引き起こされるのではという報道がなされました。

医学の歴史は、少ない症例での「ひょっとして~なのでは?」という仮説から始まり、それが多数の症例で確かめられることで前進してきました。

ですので医学はこのようなマスコミの問題提起に対して、一旦接種を中止して何万、何十万という症例で検証を行うという選択を行いました。

結果として、疑いは完全に否定されました。

接種した人も接種していない人も、ADEMを発症している割合は全く同じでありました。

この時に注意したいのは、「接種した人は発症していない」ということではなく、「接種していない人と同じ割合である」ということです。

ADEMになったある一人の人を調べると1か月前に日本脳炎ワクチンをうっていた、だからそれが原因だ!と短絡的に考えるのは、以前にお話した因果関係と前後関係の誤謬であります。

またこの検証を行うために要した数年のうちに、日本脳炎ワクチン自体はひっそりとさらに副反応の少ないワクチンへと改良がなされ、今接種されているのはその改良型のワクチンです。

容疑をかける時にはあれだけ過熱したマスコミは、これらの事実をみなさんにそれ以上の熱意と時間をかけて報道するべきでした。

しかし、日本脳炎ワクチンの名誉が回復されたとはとても言えません。

それによってたくさんの児が接種する機会を奪われているのですが、それはマスコミの関心ではないように見受けられます。

この10年ほどで急速に発達した個人発信のSNSもマスコミと同様、時に世論を動かすほどの力を発揮することがあります。

我々はこの膨大な情報社会の中で、事実と虚構を冷静に判断することが求められる、何とも難しい時代を生きているようです。

情報の取捨選択 マスコミの功罪①

数多くの情報がかけめぐる現代。

地球の裏側の出来事も、マスコミを通じてすぐに知ることができる時代です。

さらにマスコミはただ事実を伝えるだけでなく、様々な切り口から問題提起をする役割も担っています。

政治の汚職、環境問題、薬害訴訟など、マスコミの取材をきっかけに世間の注目が集まり、問題が解決されたことも少なくありません。

他方、時に一部の報道ではただ視聴者の怒りや不安を煽ることで、テレビの視聴率や雑誌の売り上げを上げるのが主目的では?と感じられることがあるのも事実です。

また、綿密な調査や取材の上での報道であっても、後に間違いが判明することもあるでしょう。

一般的にはそのような時には、非常に短い時間や小さい紙面で誤りがあったと訂正されるだけのことが多いと思います。

例えば、ある事件が起こった後しばらくして一人の容疑者の名前が連日報道されるとします。

実際には、一部の例では後に無実が証明されることもあるわけですが、一旦容疑者として情報媒体に乗ってしまった不名誉を消し去るのはほとんど不可能と言えます(ネットの発達した現代では特に)。

私はそのような時には、容疑者として報道した時間や紙面の何倍もの労力を持って潔白であったという周知がなされるべきと期待したいのですが。

便秘のお話その3 お薬や浣腸はくせになるか

便とはごみですので、あらゆる手段を使って定期的に、かつ快適に出すことが大事です。

将来的に便秘は大腸がんのリスクファクターにもなります。

さて、お薬や浣腸で便を出すことを続けているとくせになって自分では出しにくくなるという噂を聞いたことがありませんか?

これは小児科の世界の根強い誤解の一つで、完全に間違った情報です(腸管刺激性の薬剤はだんだん耐性ができるものもありますが、相当重症でしか出番はありません)。

まず、排便のコントロールを行っているのは腸ではなく脳であるというお話をしましょう。

何日に1回、肛門をどんな感じで便が通っていくかという情報を脳が受信して、それに基づいて習慣が固定されたり、加速されたりしていきます。

お薬を使ったかどうか、肛門への刺激や浣腸があったかどうかを脳は感知していません。

どう出て行ったかという情報だけです。

実際にはくせになるのは便秘の習慣の方で、歯車が回り始めるとそれが加速し、固定されていきます。

ですから野菜を取ったり、お薬や、肛門刺激や浣腸などあらゆる手段を使って、快適に定期的に便を外に出すことが不可欠であるのです。

調子がよくなってお薬がなくなってから、真っ赤な顔できばりながら何とか自力で便が出たことを嬉しそうに報告してくれるお母さんがいらっしゃいますが、「がんばって出す」というのは脳に取っては大きなマイナスの経験となりますので、しっかりお薬を続けて「快適に出す」習慣を続けましょう。

お薬や浣腸はずっと続けても特に目立った副作用がありませんので、しっかり使用させてください。

排せつ欲という言葉がありますが、食欲や性欲とともに大げさに言えば排便は気持ちよくて楽しみな作業であるべきなのです。

がんばってするものではありません。

これらの知識を元に、赤ちゃんも子どもも大人も、快適なうんちライフを目指しましょう!

便秘のお話その2 対策とお薬

離乳食が始める前の便秘の赤ちゃんでは、うんちはゆるゆるのことが多く、刺激による駆動力の補助がメインになるでしょう。

生後2か月頃に一旦出が悪くなることはよく経験しますが、うんちが柔らかい間は例の悪循環のサイクルが回りにくいため、多くのDr.が苦しそうでなければ数日に1回出ていれば大丈夫と考えています。

お腹が張ってきたり、吐き戻しが増えていれば綿棒刺激、それでも出なければ浣腸を考えてあげましょう(やるデメリットは基本的にはありません)。

動物の世界、特にネコ科の動物では母が子の肛門をなめて刺激するという補助を行っていますが、さすがに人間ではかわいいわが子とは言え気が引けますので、綿棒や浣腸などのアイテムを使用するのがよいですね。

 

それ以降の児での便秘では、まず根本に「便が固い」という要素がほぼ必ず存在します。

治療としては、この「便が固い」という部分を何とかすることがメインになります。

野菜を食べて、食物繊維を増やすというのが最も有効な対策です。

人によっては納豆やみかんを食べると調子がよいということもあります。

乳製品は調子がよくなる人とむしろ悪くなる人と両方あるので注意しましょう。

夏に汗で出ていく水分が増えると便が固くなるのは事実ですが、データ上、水分を一定以上取ってもそれ以上は尿が増えるだけで、水分摂取だけで中等度以上の便秘が改善することは期待できません。

野菜が大事と言いながら、特に小児では、さあ明日から野菜を2倍にしましょうというのは難しいため、足りない分がいよいよお薬の出番となります。

Mg(マグネシウム)製剤が最も多く使われるお薬で、便をふやかすようなイメージを持つと分かりやすいでしょう。

便がちょうどいい柔らかさになると肛門を通る際に痛くないため、がまんする癖がなくなっていきます。

Mgの内服中であっても、1、2日に1回は便を出す必要があるので、出ない時は積極的に浣腸を併用して排便させます。

2歳を越えるとモビコールという牛乳やジュースに溶かして飲むお薬に変更することができます。液体としてうんち全体にまんべんなく広がりいい感じに柔らかくなること、量の調節が自分でできることなどMgより優れている点が多いお薬です。残念ながら日本では2歳以上からしか使えませんので、赤ちゃんの頃はMgでコントロールを行います。

 

また、年長児ではトイレトレーニングや集団生活の開始とともに「がまんする」の部分から便秘の歯車が回り始めることもあります。

大人と同じトイレを使用させる場合、足が地面から浮いていると踏ん張れず適切な姿勢が取れないので足場を用意してあげて下さい。

またうんちカレンダーを作って、出たらシールを貼ってあげたたりほめたり、精神的なアプローチでがまんのくせをなくしていきましょう。

便秘の治療開始は早ければ早いほど改善も早くなりますが、完成された便秘の習慣を治すには半年から2年ほど要することが多いでしょう。