みなさん、こんにちは。非常事態宣言やっとあけましたね。本当に重苦しかったです。まだまだコロナ第2波への警戒もありますし、気が抜けない毎日ですが、うまく距離感を保ちながら、日常を取り戻していきたいですね。
当院でもいわゆる市民健診である、特定健康診査の受付を始めております。今日は、特定健康診査がどれだけメタボリック症候群に抑止力があるのかをお話ししようと思います。

特定健康診査はメタボリック症候群の発生を抑制するために特化した健康診断です。
少し古い解析データですが、2008年厚労省が行った特定健康診査受診者2000万人から抽出したデータで、審査後指導(検査後のデータをみて生活指導などをうけることです)を受けた方はメタボリック症候群の発症が30%抑制されたという結果があります。
検査の結果を踏まえて、きっちりと治療すれば素晴らしい成果を上げていることがわかります。
特定健康診査対象疾患は、高血圧、脂質異常症(コレステロールの異常、中性脂肪の異常)、糖尿病、高尿酸血症、慢性腎障害です。
- 最高血圧130mmHg 最低血圧85mmHg以上
- 中性脂肪150mg/dL以上
- 空腹時における血糖値110mg/dL以上
- HDLコレステロール値40mg/dL以下
上に示すのがメタボリック症候群の基準になります。
それではそもそも、メタボリック症候群の何が悪いのでしょうか。
高血圧になる理由の多くは動脈硬化(動脈が固くなること)のため、強い力をかけないからだの隅々まで血液が流れなくなるために起こっています。高い血圧のためさらに血管が損傷したり、ポンプである心臓にも大きな負担がかかることになり、心臓の機能低下につながる可能性があります。
脂質異常は動脈硬化の原因となり、血管が詰まったり固くなったりして、血液の流れが悪くなったり血圧が上がったりします。
糖尿病は小さな動脈が損傷をうけ、血の流れが悪くなりからだの各部の障害を引き起こします。また免疫機能の異常をきたすことも知られており、感染症にかかりやすくなったり、ガンになりやすくなったりします。
高尿酸血症はとても痛い痛風などで知られていますが、それ以外にも狭心症や心筋梗塞、脳卒中を引き起こしやすいという報告があります。
慢性腎障害は比較的新しい概念で、糸球体ろ過量(どれだけ腎臓で老廃物を捨てることができるかということ GFR)と尿中タンパク量で規定されるもので、狭心症、心筋梗塞、脳卒中に影響するとされています。
いずれも三大疾病のうちの二つ、脳卒中と心筋梗塞をターゲットとしており、メタボリック症候群対策はこの二つの撲滅を目標に掲げています。
ちなみに三大疾病のもう一つはがんですが、こちらはがん検診での対応と考えられています。がん検診に関しましては、また機会を改めましてお話したいと思います。
ではそれぞれの疾患がどれくらい影響するか、予防効果はどれくらいのものか、脳卒中を例に数字を示しながらお話していきます。

脳卒中といいますが、脳の血管が詰まる脳梗塞と血管が破綻する脳出血、くも膜下出血に大別されます。突然意識を失って身体がうごかなくなるイメージが強いと思いますが、手足がしびれる、ろれつが回らない、物の見え方がおかしい、ふらふらするなどの症状から始まるものも多いので注意が必要です。特に脳梗塞の場合は、これまでの日本人は動脈硬化性の脳梗塞、つまり脳の血管が固くなったり詰まったりして血液が届かなくなるために起こるものが多かったのですが、心原性脳梗塞(心臓にできた血の塊が脳の血管に飛んで血管が詰まるために起こる脳梗塞、心房細動による血栓が多い)も多くなってきています。
脳卒中の発生頻度は2010年で10万人あたり166人でうち、脳梗塞が107人、脳出血が42人、くも膜下出血が7人です。2011年での概算発症者は29万人で、うち死亡者は12万人です。
脳卒中と関連深いのが、メタボリック症候群の高血圧、糖尿病、脂質異常症です。
まず血圧の関与ですが血圧が5下がると発症率は40%以上低下します。高齢者の場合血圧の低下は脳卒中の危険性を30%低下させますが、あまりの低血圧(最高血圧が100を切るくらいまで抑制しつづけること)は脳血管の血流を下げてしまう可能性もあるので慎重にならなければなりません。
糖尿病はヘモグロビンA1cの厳格すぎる低下を目指すと逆に脳卒中が増加する(低血糖発作頻発のため)ので、昨年のガイドラインでは年齢と全身状態にあった管理が推奨されています。女性の方、血圧の高い方、脂質異常症のある方、喫煙者の方はリスクが上がります。低血糖が発症に悪影響を与えるため、スルホニルウレア剤はできるだけ少量投与を目指されるようになってきています。
脂質異常症に関してはスタチン(LDLコレステロールを下げる薬)の大量投与で発症を30%抑制する報告があります。目安としては中性脂肪(TG)が150以下、LDLコレステロールが160以下が望ましいと考えます。LDLコレステロールが40下がると15%の発症率低下があります。食事療法だけでの完全は困難で、食事療法+薬剤療法の組み合わせで3年後の発症を35%抑制します。特に女性場合55歳以上では53%の抑制効果があります。
以上のように、メタボリック症候群をコントロールすることで大変大きな効果を示すことが示されていますので、そのきっかけになる特定健診は非常に便利で有意義なものであることがお分かりになると思います。しかし、特定健康診査の受診率は全国平均でも50%に満たないもので、特に都市部での受診率は低いものです。せっかくのチャンスを有効利用できていない方がたくさんいることが、医療者として大変気になるところです。
メタボリック症候群は、症状が出るまでは大変【しずかな】病気です。自覚症状はあまりありません。逆に何らかの症状が出てくるときは、ずいぶん病気が進んだ状態になって、コントロールに難渋することが多いです。早めにチェック、早めのケアでより良い人生を送っていただきたいと思います。




