熱中症大警戒~発火しそうな暑さの中で~

 

こんにちは。気が付いたら毎年夏はものすごい暑さです。私の子供のころは30度超えるとフーフー言って夏バテしていたものですが、今は35度を平気で超えてきますね。室内でも、冷房をかけていても身の危険を感じるほど高温です。
日課のウォーキングも日が昇る前にしないと、直射日光で気分が悪くなってしまう季節になりました。
さて、コロナと熱中症のダブルパンチで、あちらを立てればこちらが立たない状況になってきています。
密を避けられる場所では積極的にマスクを外して、体温を下げましょう。また、お互いのために、大声で話すことは極力控えましょう。
当院でも、梅雨明け前までは換気第一でしたが、いまは冷却と換気を同等に重視して対策しております。また、院内での飲料水の提供は感染防止の観点からウォーターサーバーはおいておりません。お手数ですがスタッフに水が必要であることをお伝えください。患者さんごとに個別に冷えたお水をお渡ししております。ご面倒ですがよろしくお願いします。

今日は熱中症のお話をしようと思います。
先日より、院内の壁掲示も熱中症に集中したものに変えております。ご来院された方はごらんになってください。
さて、熱中症への対策としては
#1 のどが渇いてなくても水分を取ること
#2 だるい 疲れた 汗が止まらない 食欲がないなど 何らかの症状があるときは早めに補液を行う(点滴や経口補水剤をもちいる)
#3 体液の保持を目的とした薬剤(漢方薬)を普段から服用する
などが あげられると思います。
熱中症の代表的な症状としては段階的に
1) めまい ほてり
2) 筋肉痛 筋肉のけいれん
などから始まり
3) 発汗の異常
4) 全身倦怠感 吐き気など
の全身症状が発症し
5) 意識障害
が最終的な段階の症状になります。

1)2)の段階では涼しいところに移動し、十分にからだを冷やして、塩分を含んだ水分をしっかりとる必要があります。


しかし、3)以上になると医療機関での治療が必要になってきますので、とにかくためらわず受診してください。一度の治療でもなかなか元に戻らないことも多いですので、軽く考えずに症状が出た場合はしっかり日にちをかけて治療しましょう。

熱中症予防としては
塩分の入った液体(経口補水剤 OS-1などが望ましい)を常に携帯して、少しづつ飲むことが標準的だとおもいます。
しかし私は、漢方にであってからもう少し違うものを追加提案させていただいています。


漢方薬には清暑益気湯といって、夏バテなどの解消に用いる薬剤があります。この薬剤は生津効果(体内の水分を保持する)があり、その効果を利用して熱中症予防として以前からよく処方させて頂いておりました。こちらは、熱中症になってからではなく、普段から服用されるのがよいと思います。
また、病院に来院される症状を伴う場合は清熱、生津効果のある白虎加人参湯も有効です。
高齢者や子供さんの場合、成人より体温調節機能が低い場合が多いので、より厳重に注意する必要があると思います。


信じられない酷暑の中でも賢く過ごして、熱中症にもコロナにも負けずに夏を乗り切りましょう。

リハビリテーションの充実に向けて

みなさんこんにちは。
もうすぐ梅雨明けですね。今年は久しぶりに雨の多い梅雨であったと感じました。カタツムリも久しぶりに見た様な感じがします。梅雨明け前には近年お決まりの様に、豪雨災害が起こります。被災された方々の苦痛を思うととても人ごととは思えないですが、今年はコロナのこともあり本当に落ち着かない日々ですね。

さて、わたしたちのクリニックの大きな特徴であるのが、超音波検査機器(エコー)を駆使した診断治療です。特に、疼痛部位へのターゲッティングにはエコーが大きな威力を発揮してくれています。


癒着部を薬液注入で剥がしたり、疼痛部位をエコー下で確認しながら重積部を治療したり本当に頼りになる相棒ではあるのですが、やはりそこには、まだ満足しきれない部分も多々存在しているのは事実です。


そこで、重要なのが人の手の施術による、さらなる追加治療です。
問題となる疾患部分を注射だけではコントロールできないことも多いですので、理学療法士と共同で治療を進めることが、わたしたち手術を行わない医療者としては最大限の効果を提供できる治療方法となります。
特に、現在力を入れております、肩関節疾患に対する筋膜リリースを組み合わせた治療に関しては大きな効果が期待できる様に考えます。

本当に偶然が重なったこともありますが、今回、以前から親交のある理学療法士さんとのご縁で、週1回だけではありますが、共同で治療に当たれる体制を作ることができました。


8月21日 金曜日より 毎週金曜日終日、理学療法士さんが常駐してくれます。実は、本稼働の前に、プレとして本日ともう一日 、
診療に入っていただくことにしています。
今日はその記念すべき第一日目でした。
早速、数名の方に治療とアドバイスをしていただき、わたしだけでは提供できない世界を示してもらえて、本当に良かったと思いました。

以前、リハビリテーション病院で管理者をしていた時から強く感じていたことですが、やはり、人の手の治療は違います。患部に添えられている手の雰囲気でもう、治療への道が開いている感じを受けるのは、今回も全く同じでした。
まだまだ、体制としては不充分で、わたくしたちのクリニックも組織として未熟なため、理想の医療の提供には程遠いものがありますが、思いの他早く、ステップを上がっていける手がかりがついた様に感じました。
当面、理学療法士さんの治療は予約で運用したいと考えています。医師の診察を行った上で、アプローチを考慮させていただきたいと思っております。ご理解のほどよろしくお願いいたします。

歩きましょう!

みなさん、歩いていますか。


いきなりですみません。うちのクリニックのモットーでも歩くことがテーマになっていますが、私がこの2年ほど持続的に取り組んでいるのがウォーキングなんです。

早朝の運動はよくない(睡眠時の脱水が改善するまで1時間以上かかります。その期間に汗をかくと、より脱水が進むので、脳梗塞や心筋梗塞の呼び水にもなりかねませんが)とは言いますが、時間の関係上早朝にウォーキングをしています。

 
きっかけは太りすぎたこと。昨年は診療所の所長をしていたのですが、93㎏まで体重が増えてしまい、メタボリックシンドロームの指導を患者さんにするときの説得力がゼロになってしまっていました。これではいかん、と一念発起し歩き始めました。水泳は金づちでむり、ランニングは膝を痛める、テニスやゴルフはそもそも時間がない、ライザップはリバウンドするしということで、消去法で決めたようなものでした。

最初は10分歩いたら顎が上がってしまい、心臓バクバクでダメでしたが、徐々に時間が歩けるようになり、またスピードも上がり、1km9分前後で歩けるようになりました。
調子乗りすぎて2時間くらいあるいたり、歩きすぎてシンスプリント(下腿のいたみ、つかいすぎです)になったりいろいろしましたが、
途中でアシックスのスポーツ工学研究所の書籍に出会い、徐々にスタイルを修正していきました。


最もインパクトのあった出来事はスピードウォーキングの考え方です。1Km7分で歩くこと(競歩は5分くらいだそうです)が走ることよりもカロリー消化が大きくてしかも、ウォーキングなのでランニングより運動器に負担をかけない優れた運動法であるということを知り愕然としました。

持続的に7分で歩くのはまだ、私も体ができていないので無理ですが、インターバルトレーニングといって通常のウォークの中で何分か7分歩行を取り入れるやり方を実行しています。


そもそも、間違っていただきたくないのですが、運動で痩せようなどと思わないでください。例えば、減量のために運動だけで対応する場合は、週3回2時間以上クロールでの水泳を行わないと体重は落ちません。こんなんできますか?私には絶対無理です。もう部活ですよ、これでは。
運動の意味はやせやすい体を作ることです。筋肉を増やして、静止時のエネルギー消費を上げ(基礎代謝を上げることです)、脂肪の燃えやすい体にすることが大事なんです。あとは食事に気を付けること。

クリニックにも掲示していますが簡易カロリーコントロールである手ばかり法を用いて、概算の1日のカロリーをイメージします。無理のない食事量の制限は最後の一口を食べないです。これでおおよそ1日200カロリー少なくでき、ひと月6000カロリー減らすことになります。これで体重1kg分です。

こうして増えたり減ったり、停滞したりして1年間で14kgやせました。
ただし、ご多分に漏れずコロナ太りしてしまい4kg戻ってます。今月に入ってまたウォークも再開できているので、また次は70kg目指して励もうかと思っています。

私のウォーキングのお供は、アップルウォッチとスマホアプリのあるくとです。

ともに、調子に乗せてくれるのでついつい歩きすぎてしまいますが、一日の歩行時間の目安はできれば40分までが良いと思います。また歩数も7000程度が良いのではないでしょうか。

20万歩を1カ月に超えて歩行継続すると運動器に障害が出やすいという報告があります。

 

ウォーキングはランより、ダサい感じがしますが私は大好きです。
あるいているとどこまでも歩いて行けそうな気がしてワクワクします。かきすぎない汗もちょうどいい感じですし、爽快感はすばらしものですよ。それに何といっても、時間や季節によって変わっていく空の色や、周りの風景、歩くスピードで初めて見える町の景色など、家いろんな素晴らしい体験を身近でさせてもらえます。

 

あるくのって、いいですよ。どうですか?
靴をそろえて、ウエアを選んで、ドリンクをもって、飛び出してみませんか?

メタボリックな疾患 ~その1 脂質異常症

皆さんこんにちは。
以前に、特定健康診査のお話をいたしましたが、非常事態宣言解除後、当クリニックでも三々五々と患者さん方が受診してくださっているので、地域の健康を預かるものとしてはたいへんうれしいことです。

今回はメタボリックシンドロームのお話をしようと思います。なぜメタボリックの第一弾のお話を超コモンである高血圧にしなかったかというと

どうも毎日診療していて、脂質異常は、比較的患者さんが重要視しておられないような気がしてならなかったからです。

もともと、高コレステロール血症とか高脂血症などと呼ばれてていた脂質異常症ですが、いわゆる善玉コレステロール(HDL-C)が低値である場合も人体には脅威を与えるため、高脂血症という名前だけでは都合が悪いため、名称改定を受けたわけですが、どうも語感のインパクトが弱くなったような気がします。

もともと、自覚症状が出にくい疾患なので(逆にいえば、自覚症状が出るころには遅い!)漫然と治療している感覚に陥りやすく、場合によっては自己判断で治療をやめてしまうこともあります。

特定検診受診時に、脂質異常症の治療をする意味をよく知っていただくのが良いと思いますが、なかなか時間的な余裕もないので、今回は脂質異常症の治療意義をあらためてお伝えするつもりで書きました。

脂質異常症を治療しなければならない理由は、それが心筋梗塞や脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性の疾患につながるからです。上記の疾患だけで総死亡率の約30%を占めています。


早期に治療を行うことで動脈硬化がひきおこす病気の予防が可能になります。また、適切に治療すると動脈硬化性の変化を改善することが可能です。放置するとどんどん動脈硬化は進行します。

特定検診や一般の検査で良く測定されているのがTG(中性脂肪)とHDL-C、LDL-Cです。
後者2つは善玉、悪玉コレステロールと呼ばれています。

いずれにしても、上記の脂質異常症が存在した場合は

① 現在の動脈硬化はどの程度か
② 治療をどうするか

が今後のケアを考えていくうえで重要になります。

① は血圧、
上下肢の血圧比(ABI)、
頸動脈エコー
でそれぞれ動脈硬化の現状を数値的、視覚的に評価するとよいでしょう。
ABIは半年に1回、頸動脈エコーは年1回程度が妥当と考えます。いずれも当院で施行可能です。

また、2次的な脂質異常症も数多く存在しています。例えば
肝機能障害、
甲状腺機能障害、
腎障害、
糖尿病、
飲酒、
ある種の膠原病、
利尿薬
降圧薬(β遮断薬)、
ステロイドなど
によって引き起こされるものが有名です。それらを意識しながら治療へと進みます。

② メタボリック症候群の治療の基本はいつでも
生活習慣と食事習慣の改善
がベースになりますが、私も以前LDL-Cが高くて運動と食事でトライしましたが無理でした。どうしてもきっちり下げていこうとすると薬剤の助けが必要になるようです。
もちろん、どんな治療でもそうですが生活改善なしに薬だけで治療しようとするとなかなか薬剤の効きがよくないので、必ず、食事制限や運動は必要です。

運動に関しては厚労省が提唱している
+10分運動
が取り入れやすいです。普段の生活の中で毎日10分余計に体を動かすことから始めようという試みで、体を動かすことが苦手な方でも無理なく運動負荷できると思います。

食事に関しては細かいことになると栄養士さんにかなわないですが、
卵や牛乳のとりすぎ(卵なら1日1個まで、牛乳なら1日コップ1杯までを目安に)
砂糖、炭水化物のとりすぎ
に注意することは外来でお伝えしています。
またトータルカロリーのコントロールとしては
手ばかり法
が簡単です。待合に掲示していますので来院時にご覧になってください。

治療は薬剤によるものがやはり中心になります。
LDLが高い場合、
LDLとTGが高い場合、
TGだけが高い場合、
HDLが低い場合
それぞれに選択する薬剤が異なります。
副作用としては肝障害と横紋筋融解症が有名で、定期的な血液検査でのフォローが必要ですので、嫌がらずに検査してください。
また妊娠中の女性にはスタチン(LDLを下げる薬)というお薬は催奇形性のため適さないので注意が必要です。
スタチンには糖尿病を増加させるとの報告もありますが1000人に一人程度ですので気にしすぎる必要はないと判断されています。

脂質異常症の予防効果としては、スタチンを用いた治療でLDLが約40低下すると、心臓の冠動脈(心臓の血管、つまると心筋梗塞をおこします)疾患は20%程度の減少、脳卒中は15%程度の抑制が認められます。

管理していくうえでの具体的な数値目標として、正常値を示します。
中性脂肪(TG)は150以下、
LDL-Cは140以下、
HDL-Cは40以上
です。
予防の目標としては、個人のもつリスクによってその目標値は変化します。
リスク設定は年齢や、性別、喫煙歴、高血圧や糖尿病の程度、家族歴などを加味したスコアによって決定されます。
TGの目標はすべてが150以下です。
LDL-Cでは
低リスクの場合のコントロール目標は160以下(検査上の正常値の上限を超えています!)
中リスクの場合は140、
高リスクの場合は120以下です。低リスクでも180以上のLDL-C値が続く場合は投薬を推奨されています。
疾患罹患後の2次的な予防は100以下ですが、冠動脈疾患のある場合はなんと70以下になります。
状況によってまちまちなので、注意してください。

当クリニックでは、外来受診の際にリスク確定のために、治療中の方にもリスク因子のおたずねを行っています。リスク決定は簡易法で主に行い、
5つの危険因子(喫煙、高血圧、低HDL-C血症、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患家族歴)
をもとに年齢と男女差でリスクが決定されます。

以上、脂質異常症の診療概略を書かせていただきました。

当クリニックではできるだけ、ガイドラインに準拠した形で皆様へ医療を提供できるよう心がけています。大病院へ行かなくても、大阪市内に行かなくても身近な場所で日本標準の治療が提供できるよう常に心がけています。

骨粗しょう症のおはなし (1)

みなさんこんにちは。本格的な梅雨に入りうっとうしい日々が続いております。いかがお過ごしでしょうか。
梅雨冷えと申しまして、湿度が高く気温が下がりますと、古いけがの部分が痛んだり、神経痛がひどくなったりします。大丈夫でしょうか?保温に努め無理はなさらないようにしてくださいね。
さて、今回からすこしづつ、骨粗しょう症のことについてお話していこうと思います。

    
骨粗しょう症はおそらくどなたでもご存じの病気ではないでしょうか。骨を対象とするので整形外科でもまた、代謝が関係するため内科でもどちらでも取り扱われることが多い疾患といえます。
骨は常にリモデリングと言って古い骨を吸収し新しい骨を形成する新陳代謝を行っています。
吸収が過剰に亢進する、あるいは形成が極端に低下する場合に骨密度は低下します。また、吸収と形成のバランスが悪くなると骨の基質(材料)が劣化し骨の質も低下します。
このようにして骨の強度が失われていき、本来折れにくい部位や、折れるはずのない力で骨折が起きてしまうのです。

        
骨の基質としてはコラーゲンなどのたんぱく質とともに皆さんがなじみの深いカルシウムがあります。
カルシウムは胃を切除した後(吸収するための補助因子が胃でつくられる)、や閉経後(女性ホルモンがカルシウムを吸収促進するためのビタミンD3を体内で作るため)に吸収が低下して骨の石灰化を低下させ強度の劣化を引き起こします。
日本における骨粗しょう症の有病率は1000万人程度、年間の発病数は100万人程度と考えられ、男女比は1対3程度で圧倒的に女性の病気になっています。その理由は上に書いたように、女性ホルモンの年齢による体内変動が大きくかかわっています。
外来診察をしていても、骨粗しょう症への関心は圧倒的に女性のほうが高いように思います。
皆さん何を怖がっておられるのかを伺うとおおむね、骨折して寝たきりにすすむのがいやだということになるでしょうか。
実際、骨粗しょう症の生命予後(寿命)に及ぼす影響は世界中で報告がなされており、背骨の圧迫骨折の数が死亡率と関係があったり、大腿骨の骨密度の低下が死亡率を上昇させる、さらには大腿骨頸部骨折後1年で25%方が亡くなるというショッキングなものもあります。
それだけでなく、やはり、病的骨折(大腿骨頸部骨折や腰椎圧迫骨折など)を予防すると寝たきりや施設入所の率が低下することもわかっています。
骨粗しょう症はこのように、高齢者の生活の質を著しく低下させるため予防することが非常に大切です。
予防すなわち診断ですが、それには非常にシンプルなものが使われています。
病的骨折があればすなわち骨粗しょう症であり、またない場合には骨密度の低下が若年者の平均の70%以下になったものを骨粗しょう症として治療対象と考えています。
骨粗しょう症と適切に向き合うためには、女性であれば閉経後、男性であれば65歳以上で積極的に骨密度の測定をお勧めします。
測定法にはいろいろあります。
DEXA法を用いた腰椎、ないしは大腿骨の検査が適正であるという学会推奨がなされています。
DEXA法は検査として精度はたかいのですが、機械が大掛かりでなかなか設置してある医療施設も少ないです。
幸い当院にはアロカ製のDEXA法での測定装置がございます。

       

私が考えます、いつまでも自分の足で歩くための身体づくりの第一歩は骨です。骨をしっかり強化することが当クリニックの大きな目標となっております。ぜひ、腰椎のDEXA法での骨密度測定を受けていただき、適切な骨量管理のもと、ながくながくご自分の足で歩いて行ってください。

        

交通事故 特に後遺症診断について

コロナウイルスによる非常事態宣言の最中はさいわい交通事故も少なかったと伺います。

しかし、毎日車を運転して通勤している自分自身としては、交通事故加害者となる危険性もさることながら、交通事故被害者となる恐怖もぬぐいがたいものがあります。


当院では交通事故の患者さんもおいでになっていますが、皆さん多分に不安を抱えながら通院なさっているようにお見受けします。
不安の最たるものは、後遺障害にあるといっても過言ないのではないでしょうか。


後遺障害に関して、診療をおこなう立場から最近の医学会の考え方も含めお話ししようと思います。

一般的に交通事故傷害の場合、外傷発生時期より3か月以上経過すると症状の改善は難しくなるという報告があります。

その間に障害された組織が改善すれば問題ないのですが、筋肉や靱帯などのいわゆる軟部組織のダメージはある程度残存するのではないでしょうか。(もっとも私たちがよく経験するのは足首の捻挫です。ある程度完治しますが、パフォーマンスが低下したり、痛みが残ったりすることも多いように思います。)

後遺障害はないに越したことはないですが、残存した症状に対してはだれしも正当な評価を望むものです。

交通事故に関する後遺障害については、自賠責後遺障害診断書などの記載が必要になってきますが、ここで、後遺障害に関して、私たち医療者が患者さんにしっかりと向き合い、できるだけ正確に書類申請を行うためには、それなりの準備が必要であることはご存じでしょうか。

医学的見地からみた障害の程度を推測するために、

1)障害部位に応じた神経学的な所見

2)症状の経過

3)病院・クリニックでの診療回数

慰謝料の計算としては問題ないそうですが、後遺症に対するかかわりに関しては整骨院での診療は治療実績としてカウントされないとの話も。通院日数が少ないと、症状に乏しいと判断されるそうです。)

 

以上を踏まえたうえで、私はこう考えています。

交通事故患者さんは
1) 必ず画像検査を残すこと
2) 症状の変化があるのでしばらくは聞き取りを絶やさないこと
3) 神経学的異常があれば、ためらわずCT・MRIを行うこと
4) 診療回数が極端に少ない場合や、都合であきは(あんま、灸、針など代替治療、整骨院も含む)医療に移行ないしは併用を行う場合は、後遺症診断上不利を被る可能性を持つことをしっかりお伝えすること

以上が、最悪の場合でも後遺障害への補償につながると考え、抜かりなくお伝えしていきたいと思っています。

労働災害もそうですが、交通事故もないに越したことはありませんが、人生の中でだれもが1度は出会うものではないでしょうか。身体にできるだけ痛みを残さず、残念ながら残った場合でも納得のできる形で対処してもらいたいのはすべての人の望みだと思います。

上にお伝えしたような内容をご理解の上、つらい治療にたいして、すこしでも希望をもって臨んでいただければと考えております。

市民健診(特定健康診査)を受けていただきたいこれだけの理由

みなさん、こんにちは。非常事態宣言やっとあけましたね。本当に重苦しかったです。まだまだコロナ第2波への警戒もありますし、気が抜けない毎日ですが、うまく距離感を保ちながら、日常を取り戻していきたいですね。

当院でもいわゆる市民健診である、特定健康診査の受付を始めております。今日は、特定健康診査がどれだけメタボリック症候群に抑止力があるのかをお話ししようと思います。

特定健康診査はメタボリック症候群の発生を抑制するために特化した健康診断です。

少し古い解析データですが、2008年厚労省が行った特定健康診査受診者2000万人から抽出したデータで、審査後指導(検査後のデータをみて生活指導などをうけることです)を受けた方はメタボリック症候群の発症が30%抑制されたという結果があります。
検査の結果を踏まえて、きっちりと治療すれば素晴らしい成果を上げていることがわかります。

特定健康診査対象疾患は、高血圧、脂質異常症(コレステロールの異常、中性脂肪の異常)、糖尿病、高尿酸血症、慢性腎障害です。

  • 最高血圧130mmHg 最低血圧85mmHg以上
  • 中性脂肪150mg/dL以上
  • 空腹時における血糖値110mg/dL以上
  • HDLコレステロール値40mg/dL以下

上に示すのがメタボリック症候群の基準になります。
それではそもそも、メタボリック症候群の何が悪いのでしょうか。
高血圧になる理由の多くは動脈硬化(動脈が固くなること)のため、強い力をかけないからだの隅々まで血液が流れなくなるために起こっています。高い血圧のためさらに血管が損傷したり、ポンプである心臓にも大きな負担がかかることになり、心臓の機能低下につながる可能性があります。
脂質異常は動脈硬化の原因となり、血管が詰まったり固くなったりして、血液の流れが悪くなったり血圧が上がったりします。
糖尿病は小さな動脈が損傷をうけ、血の流れが悪くなりからだの各部の障害を引き起こします。また免疫機能の異常をきたすことも知られており、感染症にかかりやすくなったり、ガンになりやすくなったりします。
高尿酸血症はとても痛い痛風などで知られていますが、それ以外にも狭心症や心筋梗塞、脳卒中を引き起こしやすいという報告があります。
慢性腎障害は比較的新しい概念で、糸球体ろ過量(どれだけ腎臓で老廃物を捨てることができるかということ GFR)と尿中タンパク量で規定されるもので、狭心症、心筋梗塞、脳卒中に影響するとされています。
いずれも三大疾病のうちの二つ、脳卒中と心筋梗塞をターゲットとしており、メタボリック症候群対策はこの二つの撲滅を目標に掲げています。
ちなみに三大疾病のもう一つはがんですが、こちらはがん検診での対応と考えられています。がん検診に関しましては、また機会を改めましてお話したいと思います。

ではそれぞれの疾患がどれくらい影響するか、予防効果はどれくらいのものか、脳卒中を例に数字を示しながらお話していきます。


脳卒中といいますが、脳の血管が詰まる脳梗塞と血管が破綻する脳出血、くも膜下出血に大別されます。突然意識を失って身体がうごかなくなるイメージが強いと思いますが、手足がしびれる、ろれつが回らない、物の見え方がおかしい、ふらふらするなどの症状から始まるものも多いので注意が必要です。特に脳梗塞の場合は、これまでの日本人は動脈硬化性の脳梗塞、つまり脳の血管が固くなったり詰まったりして血液が届かなくなるために起こるものが多かったのですが、心原性脳梗塞(心臓にできた血の塊が脳の血管に飛んで血管が詰まるために起こる脳梗塞、心房細動による血栓が多い)も多くなってきています。
脳卒中の発生頻度は2010年で10万人あたり166人でうち、脳梗塞が107人、脳出血が42人、くも膜下出血が7人です。2011年での概算発症者は29万人で、うち死亡者は12万人です。
脳卒中と関連深いのが、メタボリック症候群の高血圧、糖尿病、脂質異常症です。
まず血圧の関与ですが血圧が5下がると発症率は40%以上低下します。高齢者の場合血圧の低下は脳卒中の危険性を30%低下させますが、あまりの低血圧(最高血圧が100を切るくらいまで抑制しつづけること)は脳血管の血流を下げてしまう可能性もあるので慎重にならなければなりません。
糖尿病はヘモグロビンA1cの厳格すぎる低下を目指すと逆に脳卒中が増加する(低血糖発作頻発のため)ので、昨年のガイドラインでは年齢と全身状態にあった管理が推奨されています。女性の方、血圧の高い方、脂質異常症のある方、喫煙者の方はリスクが上がります。低血糖が発症に悪影響を与えるため、スルホニルウレア剤はできるだけ少量投与を目指されるようになってきています。
脂質異常症に関してはスタチン(LDLコレステロールを下げる薬)の大量投与で発症を30%抑制する報告があります。目安としては中性脂肪(TG)が150以下、LDLコレステロールが160以下が望ましいと考えます。LDLコレステロールが40下がると15%の発症率低下があります。食事療法だけでの完全は困難で、食事療法+薬剤療法の組み合わせで3年後の発症を35%抑制します。特に女性場合55歳以上では53%の抑制効果があります。
以上のように、メタボリック症候群をコントロールすることで大変大きな効果を示すことが示されていますので、そのきっかけになる特定健診は非常に便利で有意義なものであることがお分かりになると思います。しかし、特定健康診査の受診率は全国平均でも50%に満たないもので、特に都市部での受診率は低いものです。せっかくのチャンスを有効利用できていない方がたくさんいることが、医療者として大変気になるところです。
メタボリック症候群は、症状が出るまでは大変【しずかな】病気です。自覚症状はあまりありません。逆に何らかの症状が出てくるときは、ずいぶん病気が進んだ状態になって、コントロールに難渋することが多いです。早めにチェック、早めのケアでより良い人生を送っていただきたいと思います。

免疫力を上げるには 最終回 フレイルとの戦い

全く同じテーマで、延々書きつづっていますが、今回最終回です。

大阪府下も新規のコロナウイルス感染者がぐんと減って、先が見えてきた感じはありますが、緩和による第2波への懸念も消えないため
当院でもまだまだ非常事体制でコロナウイルス対策に取り組んでいきます。

さて、長期の自粛のため屋内に引きこもりがちになっている方も多いように思います。当院への患者さんの足取りも重いものとなっており、本当に息が詰まるような日々を肌で感じさせられています。

ようやく、非常事態宣言が解除されたといってもコロナ危機が去ったわけではありませんので、こんな時には屋外に出かけるのが本当に怖いですが、そのために運動不足になることが大きな問題になってきています。
表題のフレイルですが、脆弱、虚弱という意味で、まさに、いま多くの方が直面している運動不足による心身の虚弱化を表しています。

筋力低下(ロコモティブ症候群、サルコペニアなどという言葉をお聞きになったことがあると思います)が起こることで、活動性が低下し、基礎代謝が低くなり、さらに食事もとれなくなり、また筋力が低下していくという悪循環が形成されフレイルの状態が進んでいくと考えられています。

ひきこもりを余儀なくされ、感染の恐怖のため心身共に疲弊し、フレイルの良くないサイクルの中に引き込まれていき、どんどん食事もとりづらくなってくると、腸管免疫も低下します。
このようなコロナ禍の事態を全く予期していなかったのですが、わたくしは以前より健康生活を送るための筋肉と骨の重要さ、日常の生活の質(ADL)の低下のため免疫力の低下が生じることなどを講演などでお話してまいりました。


当院ではクリニカルモットーとして【いつまでもじぶんのあしであるくために】を掲げていますが、皆さんにフレイルに陥らずに快適な生活を送っていただきたいという強い思いが込められています。筋力低下は最終的に全身機能が低下して寝たきりの状態に至ります。長期臥床状態になると免疫力低下のため感染症によって命が奪われることも多いのです。
厚労省も提案していますが、日ごろのからだの動きプラス10分の運動が健康な毎日につながります。勇気をもって外に出て(もちろんしっかり感染対策をしてください)、10分間でよいので運動をしましょう。
筋肉を使い、骨を強化し、体幹が丈夫になることで日常生活の活動状態(ADL)が向上します。よいADLを保つことがフレイルを防止し、免疫力の低下を極力抑えることにつながるため、意識して運動していただく必要があります。
とにかく運動をしましょう。少しでもいいから身体を動かしてください。そしてしっかり食事をとってください。
コロナウイルスの治療法が未確立である今は、身の回りでできることを懸命にこなしていくことが大切だと考えます。
未曽有の災害をもたらすコロナウイルスに負けない暮らしを、できるところから始めましょう。

免疫を上げるには 第二回 漢方薬の利用

こんにちは。第一回目の免疫力増強のお話は、善玉菌の活用による腸活のお話でした。今回は、私の得意とする漢方治療のお話をさせていただこうと思います。


漢方薬が活躍していた古代中国の世界では、人はいとも簡単に感染症で命を落としていました。洋の東西を問わず、人類は長い間感染症に翻弄され続けてきました。ペニシリンなどの抗生物質の登場や、種痘などの予防接種の登場は人間の生存率を飛躍的に向上させたことは歴史が示しています。

私たちが今直面している新型コロナウイルスは、これまで人類が出会ったことのない未知のウイルスとの遭遇であったため、まさに昔の人間が直面した感染症の恐怖を味わっていることになりますね。

微生物を殺す有効な薬剤がない場合は、昔も今も症状を軽くする治療(対症療法)が中心となりますので、治るかどうかはどうしても本人の免疫の力や体力に頼らざるを得ません。
古代中国の医療はまさに感染症との戦いでした。

感染症という概念もわからず外から入ってきた邪悪なものをいかに追い払うことに血道をあげてきたのです。これを現代風に解釈すると、体内に入ってきた感染源に免疫力を高めて対抗するということにほかならず、そういう効能の薬剤がたくさん準備されています。

実際に現代の診療でもインフルエンザの治療の何番目かには麻黄湯という、解表(入ってきた外敵を打ち払う)薬が選択されますし、皆さんの良く知っている葛根湯も適切な使用を行えば素晴らしい効果を発揮する解表薬です。このような薬剤は、日本のそのままではないですが、今回のコロナウイルスの蔓延の際にも中国で実際に使用されています(現代の薬と併用しています)。実際の使用方法などは【COVID-19 感染症に対する漢方治療の考え方】として 金沢大学附属病院漢方医学科 小川 恵子先生が日本感染症学会のホームページにいち早く寄稿なさっています。
現行の西洋薬にはこのような効能を持つものはなく、私自身がこれまでインフルエンザなどの治療に使用してきた実感からすると、うまく西洋薬と組み合わせることで対応できる幅も増えるのではと感じています。
また、急な外敵との遭遇戦の免疫力強化ではなく、日ごろの免疫力強化としては補中益気湯などに効果があるかもしれません。こちらの薬剤も、インフルエンザの発症率低下や症状軽減などの効果が報告されているものです。

漢方薬には私たちが忘れ去った知恵や工夫がたくさん詰まっています。そのおかげで、今の西洋医療では手のとどかない症状や体調不良を治すことができることもしばしば経験します。
いまはどんな方法でもいいのでコロナウイルスと無関係でありたいと皆が願っているわけですので、あらゆる方法を講じて、未曽有のコロナ禍を乗り切っていきたいものです。

免疫力を上げるには~第一回 善玉菌の活用

コロナ感染症一辺倒の毎日になっておりますが、いかがお過ごしでしょうか。コロナ自粛がありストレスも大いに溜まってきているところと思います。

また、ウイルスに対する有効な薬剤やワクチンの開発もまだまだかかりそうな状況で、個人に備わっている免疫力が唯一の頼りである日々はいまだしばらく続きそうです。

 

人体に備わっている免疫を担当する細胞たちの約60%は実は腸の粘膜内に住んでいます。この細胞たちは日々体内に取り込まれてくる異物と腸内で接触して切磋琢磨しており、腸内環境と免疫機能は密接にかかわりあっていることが近年明らかになってきました。
腸内環境で肝心なことは、
1)腸粘膜のコンディション
2)腸内細菌叢の状態
です。
1) は食事をきっちりとることで整えられていきます。病気などでしばらく食事がとれない時期が続くとあっという間に腸管粘膜がうすくなり衰えてしまうことが知られています。それは免疫細胞のすみかがなくなることを意味しており、60%の免疫細胞のすみかを失ったからだは、免疫機能が極端に低下してしまいます。それだけ、口から食事をとることは大事であり、内容はともあれ、できるだけバランスの良い食事をきちんととることが免疫維持に重要な意味をもってきます。
食事は栄養面だけではなく免疫にも関係しているので、健康の基本であることが分かっていただけるとおもいます。

元気な善玉菌のイラスト
2) は、最近よくテレビなどでも取り上げられる【腸活】のトピックです。人間の腸の中には多種多様な細菌が住んでおり(腸内細菌叢といいます)、そのバランスが保たれていることが免疫細胞の働きに重要な役割を果たしています。

腸内細菌叢のバランスを保つのに非常に大きな役割を果たすのが、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌と呼ばれている菌類で、乳製品の発酵食品に入っているものです。皆さんになじみの深いものとしてはヨーグルトであったり、またヤクルトのような乳酸飲料がそれにあたります。これらの善玉菌が産生する乳酸や酢酸が腸内環境を弱酸性に保つことでいわゆる悪玉菌を減らし腸内細菌叢の適切なバランスを保ちます。

善玉菌投与の効果は科学的にも実証されており、例えばインフルエンザにかかりにくくなったり、その症状の軽快につながる、または、ノロウイルスによる腸炎の症状を軽くしたりするという結果が報告されています。

善玉菌を摂取するだけでなく、善玉菌の生育環境を整える手法があります。善玉菌をより効果的に活躍させるためには、食物繊維をたくさんとること(野菜をたくさん食べましょう)と、摂取する糖分を善玉菌のごはんであるオリゴ糖に変えてやることがよいとされています。

善玉菌+食物繊維+オリゴ糖はよりよい腸内環境の方程式です。その答えは免疫強化として現れてきます。明日からでもできる免疫強化法ですのでぜひ取り組んでみてください。興味を持たれた方は、外来でご説明いたしますのでお声掛けください。

皆さんも、腸内環境を整えて、免疫力の強化を行いましょう。ちなみに、コロナ自粛でストレスをためるのは免疫にマイナスに働きますので、上手にストレスをかわす方法も考えてくださいね。

第二回 漢方薬の効用へとつづきます。