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 糖尿病  メタボリックな疾患その3

皆さんお元気でしょうか。コロナなかなか変わりませんね。いつまでも続いて本当につらいですね。
さて、最近、患者さんからこんなことをよく聞かれるようになりました。
【新型ウイルスは併存疾患があると重症化するので怖いが、自分自身の状態は併存疾患というのだろうか?併存疾患としてどの程度コロナに弱いのだろうか。】
大変難しい質問だと思います。疾患名は上げることはできても、明確なライン引きは困難だろうと考えます。ただし、慢性閉塞性呼吸障害(COPD)のようにそもそもターゲットになる肺が弱い方や、糖尿病のように免疫機能に障害が出る疾患は要注意だと思います。

ガイドライン的には、高血圧や心疾患なども挙げられています。いずれも今まで以上にしっかりとコントロールしていく必要があるように思います。皆さんも気を抜かずに病気のコントロールを私たちと一緒に頑張りましょう。

さて、うえにも話が上がってきた糖尿病のことに関して今日はお話ししようと思います。

一般に内科の病気は、症状が出る前に検査で指摘だれることが多く、患者さん自身は実感がないものです。メタボリック関連で例外はあのものすごくいたい痛風発作ぐらいでしょうか、自覚できるのは。
症状が出ない分、治療する気持ちにもなりにくいのは当たり前だと思います。

それに対して、私たちは疾患の恐ろしさを知っておりますので何とか治療していただきたい。そして、ついつい、ほっといたらえらいことになるという論調で治療を誘導しがちですが、そこはぐっとこらえてできるだけ時間をかけてお話しするようにしています。

たとえば、あなたが糖尿病であるとしましょう。検診で血糖が高いとか、ヘモグロビンA1Cが高いなど言われて病院に相談に来ています。何年も前から言われているんだけど、ちょっと年齢も上がってきたのでさすがにちょっと診察に来てみた なんて方も結構おられます。

お話を伺って検査を再度行い確認してから治療へと向かうのですが、血圧でもなんでもそうなんですけど、メタボリックの患者さんは基本生活指導が治療のベースですので、程度が軽い場合は食事指導や運動療法のみでまず様子を見ていただきます。

少し生活指導のことをお話ししましょう。どんな治療をおこなうばあいでも基本となりますのでよく読んでくださいね。

食事指導と申しましても、当院には管理栄養士はおりませんので、私がいつもお勧めしているのは簡単栄養管理法の、手計法(てばかりほう)です。
食事の内容をご飯、肉や魚などのたんぱく質、野菜という風に分けて、一食分の目分量を図っていくやり方です。詳しくはネットで検索してみてください。あるいは、外来で私に尋ねてください。簡単でとても分かりやすい方法です。
この方法を使えば、精密な管理は無理ですが、一日1400から1600カロリー程度に食事のエネルギー量を抑えることができます。
体重管理として、だいたい体重1kg当たりの必要カロリー数は6000カロリーなので、例えば1か月で1kg体重を落としたいのであれば、一日当たり200カロリー減らしていけばいいことになります。おにぎり1個分程度のカロリーです。
外食中心に生活していますと、一日の摂取カロリーはあっという間に2000カロリーを超えてしまいます。
手計法で計算した量ですと、最初はおなかがすくかもしれませんが、簡単で誰でもできる食事管理法なので、薬剤治療が入らない患者さんはもちろんのこと、薬剤の治療と併用していく患者さんもぜひ利用していただきたいと思います。

運動療法は、私は補助的にとらえています。筋肉量を維持することで、運動をしていない静止時の基礎代謝を上げて、太りにくい体を作ることを目標としていただきたいです。
自分自身の経験で恐縮なのですが、開業前に1年間で13kgの減量を行いました。その時は食事管理と運動がとても良いバランスだったと思っています。食事の目安は手計法で行いました。運動はウォーキングを中心に行いました。以前のウォーキングに関するブログにも書きましたが、運動の目安は一日7000歩を超えないように設定しています。できるだけ毎日で。運動時間は40分程度までにしています。過剰なウォーキングは膝や足首、下肢の筋肉にダメージを与えるため、継続を旨とするのであれば、一か月の総歩行数は20万歩以内に収めたほうが良いといわれています。負荷をかけたい場合はインターバルトレーニングで早歩きをします。
そこまでしなくても、いまの生活の運動量に毎日プラス10分(+10という運動指標が厚労省から提案されています。一度ホームページを見てください)運動をすることで、ある程度筋肉量も担保されますので大変良いかと思います。
運動で体重のコントロールをするのを私はあまり勧めていません。ちなみにスポーツで体重を減らすためには週3回 毎回2時間以上のクロールでの水泳 レベルの運動が必要とされるということが分かっていますので、これを本気で実践するためには相当体を作りこんでいかないと難しいように感じます。
くれぐれもオーバーユース(使いすぎ、やりすぎ)にならないように気を付けてください。

さて、メタボに対する基本的な生活習慣改善の簡単な方針を示しました後は、いよいよ、疾患の薬剤による管理のお話に移りましょう。

糖尿病の管理の指標は血液検査が中心となっています。一つは血液中の糖の濃度である【血糖値】でもう一つが採血日からさかのぼって数日分の血糖値の平均を表す【HbA1c ヘモグロビンA1c】です。
こちらを適切に測定しながら薬剤のコントロールを行っていきます。

管理に関して極論を申し上げるとすれば
【低血糖を起こさない】
ということに尽きるのではないでしょうか。

以前のガイドラインでは正常領域での管理が推奨されていました。今も、若年者はそうですが、高齢者になると少し様相が変わってきました。

65歳以下のコントロールに関しては
HbA1cで考えると、血糖の正常化を目指す場合は6未満、合併症予防を目指すので7未満、強化治療ができない場合は8未満を目指すとされています。

高齢者の場合は
認知機能が正常または軽度で日常生活が自立できている場合はHbA1cが7未満
認知機能の障害上がって日常生活の自立ができていない場合は8未満
を目安とします。

インスリンやSU製剤(アマリールなど)を使用している場合は重症低血糖が起きる可能性があるので
認知機能と生活力が正常な場合は
65歳から75歳までは 6.5から7.5
75歳以上は 7から8
までにコントロールすること。
軽度の認知能力障害や軽度の生活障害がある場合は年齢を問わずに 7から8まで
重度の障害の場合は
年齢を問わずの 7.5から8.5
にコントロールすることが推奨されています。

このように、ずいぶんと幅のある、低血糖を避けるコントロール法が推奨される理由はただ一つ、低血糖による心血管障害が生命の予後を悪くすることが分かったからです。

このことを踏まえて、糖尿病の治療薬の選択を私は以下のように考えています。

1) メトホルミンを中心に据えた治療を行う
2) SU製剤(アマリールなど)を極力使わない
3) インスリン導入をためらわない

1の事項に関しては、まず、安価であること。それから、高血糖状態による体内でのインスリン利用の低下(糖毒性)を改善することが大きな魅力となります。ただし腎不全、アルコール依存症、心、肝、肺機能異常患者には乳酸アシドーシスに注意して使用する必要があります。メトホルミンはシックデイといって、食事がとれない体調不良時には休薬する必要があることは注意を要します。

2の事項に関しては、SU製剤が低血糖を引き起こしやすく、また、他の薬剤と併用する場合に特にそれが顕著になるということに注意が必要です。SU製剤は強力に自己のインスリンを誘導するため、適応には慎重を要すると考えています。たとえば著しい高血糖でしかも入院はしたくないし、インスリン投与は絶対いやだという場合などに用いればよいと思います。また、使用する場合にはできるだけ少ない分量にとどめるのが、低血糖を防ぐために良い方法です。
まだまだ、たくさんのSU剤をお使いになっている患者さんがおられますので、患者さんとじっくり話し合いながら、他の薬剤と入れ替えながら減量を図っていくのがよいでしょう。

3に関しては、大胆にインスリンを導入することで、体内の糖代謝の状態を改善し、体内の糖の代謝状況を早期に改善することで、最終的にはインスリンを離脱させる目的に使います。

経口で使用可能な薬剤が増えてきていることと、インスリンへの忌避感が強いこともあって、インスリンの使用はなかなか進まない感じがします。一つのめどとしては経口剤3種類を最大限用いてもコントロールできない血糖はインスリン使用の対象と考えたほうがよいでしょう。

メタボリック症候群に属する疾患は、指摘をされる時期には自覚症状がないものがほとんどです。
当院は整形外科の患者さんも多く受診されますが、
運動器の疾患と内科疾患との大きな違いは自覚症状の出方だといつも強く感じてしまいます。

からだの痛みは強い自覚症状になりますのでみなさん我慢できずに早めに来院してくれます。おかげで腕や足が動かないとか大変なことになる前に治療の導入ができますので、大きな問題に至らない場合が多いように見えます。

内科疾患のほとんどは、ずいぶん重症にならないと症状が自覚できません。医学の発達のおかげで、症状が出る前に異常が分かることが大変多くなっています。例えば高血圧でも、血圧を測ればわかりますし、糖尿病や、慢性腎障害、脂質の異常などは血液検査で異常値がよくわかります。ほとんどが、指摘を受けたときには症状がなく、病気の意味を理解しないと放置してしまう可能性が高いように思います。
多くが生命に直接関係しますので重症化するとすぐそこに生命の危機がやってきます。

さて、糖尿病の場合は3つの大きな合併症があります。
1)腎機能障害(進行すると透析が必要)
2)目の障害(視神経・網膜の障害)
3)神経の障害(手足のしびれ)
これらは糖尿病の特徴である細い動脈の障害から派生するものです。血管障害は比較的大きな血管にも波及し、心筋梗塞や脳梗塞、あるいは足の動脈の閉塞から指を失ったりすることもあります。
それ以外にも、糖尿病はからだの免疫機能の低下をきたすため、感染への抵抗力が低下したりがんが発生しやすくなります。

これら重篤な症状が発生するころには後戻りできなくなっていることも多く、早期に生活習慣の子不整と薬剤治療を始めることが大変大切になります。

程度にもよりますが、まず可能であればメトホルミンやDPP4阻害剤から開始し、A1cや血糖値を随時測定しながら薬剤を増減していきます。
前述のように、3種類ないしは4種類の違った効果の内服薬を組み合わせても制御できない場合はどうしてもインスリンの使用が必要になります。

メタボリック症候群のような内臓慢性疾患の治療をする際に、長期化する治療を嫌い、治療開始をためらう患者さんにもよく出会いますが、早期の場合必ずしも一生の付き合いになるわけではないこと、またある程度進行している場合でも、真剣に向かい合えば服薬量を減らしたりもできることをお伝えするようにしています。
生活習慣と体質が深く絡んでいる疾患なので、変えていくことは難しいですが、できるだけしっかりと病気に向かい合っていただき、長くご自分のからだをつかっていただくために、われわれも患者さんに寄り添っていきたいように考えています。

ハイドロリリース ナウ

皆さんこんにちは。
ちょっと衝撃的でしたので、急遽ブログをアップすることにしました。
今週後半に至って、ハイドロリリースのお問い合わせが増えてまいりました。

テレビ放送が今週行われたように伺っております。番組での内容を把握はしておりませんが、適切な内容が皆様に伝われば幸いかと存じます。

当院の注射による疼痛治療の基本はハイドロリリースによる重積ファシアのリリースと理学療法士の手による治療のコラボレーションで最大効果を出すことです。

当院では、特に肩関節の運動障害(四十肩・五十肩)の治療に力を入れております。おかげさまで、開院当初より多くの患者さんに治療を受けて頂いております

本当に凍結肩と言っていいような、重症の可動域障害の方も多数おられまして、時間はかかるものの徐々に【卒業】して下さってきています。
医療者としては本当にうれしいことです。

今後とも、治療に邁進していく所存です。

宜しくお願いします。

動かしにくい、痛い肩の治療へ(いわゆる四十肩・五十肩)

 

皆さんこんにちは。ついにふたたび、新型コロナウイルス対策としての非常事態宣言が我々の大阪の街にも出てしまいましたね。非常事態の発令に関しては巷でも諸説渦巻いており、どれも一理あるように思います。最も恐ろしいのは過剰に恐怖をあおられて、本当に必要なことを後回しにしてしまうことだと思います。寒い中ですが、からだの維持のために、ウォーキングなどの最低限の運動することや、疾患をお持ちの方はご自分の疾患のケアをきちんと医療機関でなさることが大切だと考えます。コンディションをしっかり整えておかないと、感染症に負けてしまいますのでからだのメンテナンスだけには最小限で結構ですので気を付けていただきたいと願います。

さて、本題ですが、今回は何度もお話ししましたが、理学療法士のリハビリテーションも本格的に始まったこともあり、当院が特に力を入れています四十肩・五十肩の治療に関するお話をあらためてしようと思います。
以前から申し上げていることなのですが、四十肩・五十肩といってもからだのなかで起きている変化は様々です。


加齢や外傷、オーバーユースなどで生ずる上腕骨を肩関節に固定釣りあげるための筋肉である肩腱板の損傷、上腕二頭筋(力こぶの筋肉)の腱の断裂や炎症、肩関節自体の変形(変形性肩関節症)、肩関節周囲の筋肉や腱に持続する炎症が続くために生じる腱板石灰化など、あげるとたくさんの病態があります。それぞれに対処法が異なってきますので、細やかなケアが必要に思います。
肩関節周辺の炎症のため、運動痛があったり、運動制限が起こったりしているので、炎症による癒着をはがしたり、炎症を抑えて状況を改善したりという治療を行っています。
実際の患者さんの例を何例か挙げてお話ししようと思います。


【症例】
理由なく、肩の痛みと運動制限が生じた。腕は60度程度しか上に上がらず、帯を締めるような動作もできない。夜間に痛みが強い。という主訴で来院された方がいます。もっともよくお見受けする症状です。
疼痛が強めで、運動制限も強いので、このような場合は、肩関節内にステロイドもしくはヒアルロン酸を注入し理学療法士に肩関節の可動域改善運動治療をお願いしています。


おおくの方はこの処置で可動域が回復し痛みがコントロールされるのですが、中には周囲の筋肉や靱帯のこわばりが伴っている方もおられます。肩甲骨と胸郭の関節(肩の裏側)の可動性がなくなっているために、肩の運動が損なわれている場合も多く、肩甲骨と胸郭の筋肉の間を注射液でハイドロリリースしさらに理学療法士に手で肩甲骨の可動性を整えていってもらいます。


また、肩前方の痛みを伴う方も多く、この場合は肩前方から情報にかけての靱帯の周囲の癒着をハイドロリリースで剥離し、その後理学療法士に同じ部分の可動性の調整をしてもらっています。
もちろん、ハイドロリリースは用いる針が細いといっても注射ですので、注射はちょっと、という方もおられます。その場合は、温熱療法や低周波療法と、理学療法士の用手的治療を組み合わせて受けていただいています。
ただ、残念なことに理学療法のみでは、のぞむ可動性に到達しないことも少なくありません。これは、私が注射単独で治療していた時と同様な結果と考えます。

 

長年、私が従事していましたがん治療においては、手術単独、抗がん剤単独、緩和ケア単独のいずれも単独の治療では十分な治療効果を出すことが困難で、相乗効果を狙って複数の治療を同時に行うことが一般的でした。これを集学的治療といいます。
肩関節のトラブルも、同じことで複数の治療を並行することでより高い相乗効果を狙っています。『運動器疾患における集学的治療』と呼んでもよいと思います。

より、困難な症例の方、いわゆる凍結肩のような腕が全く上がらない患者さんの場合はまさにこの『運動器集学的治療』がふさわしい病態だと認識しています。自らの診療経験としてお話しするとすれば、運動制限の強い肩関節障害の場合はなかなかハイドロリリースを駆使しても望む治療点に到達するまでに至らなかったり、ものすごく時間がかかってしまったりしていました。昨年の夏より、理学療法士と共同治療を開始して運動制限の改善が認められ、日常生活の支障がなくなった方が増えてまいりました。

たとえば、来院時に肩が40°ぐらいしか回せなくて、注射治療でも110°程度までの改善だったのが、合わせて治療し始めてから160°以上回る(こうなれば高いところのものが無理なく取れます)ようになったという具合です。
以前は治療限界に阻まれて、肩関節の癒着剥離などの手術をお勧めすることも多かったのですが、理学療法を合わせて治療を行うようになってから何とか日常使用に足りるだけの肩の可動域を獲得してもらえるようになっています。
院内でも、私と理学療法士2名とで治療の方向性に関して頻繁に討論しております。このようなことも治療に奏功しているのではないかと思います。
ふるやまクリニックとしては今後も、肩の治療に力を入れてまいります。お困りの際にはぜひ相談においでください。

新年のご挨拶

 

  皆さん、あけましておめでとうございます。数年に一度の寒波が年末年始に襲来し大変寒い日々が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか。
新型コロナウイルスも蔓延度を増して襲い掛かってきており、どうやら関西圏にも非常事態宣言が出されるようですね。何気なくふるまっていた日常がウイルスという天災に奪われてもうすぐ1年がたとうとしています。
今回の非常事態宣言自身は、昨年の様なものにはならないでしょうし、また前回と全く同じように我々も行動していると、精神的にも肉体的にもむしばまれてしまうでしょうから、自らの健康を損なうほどに引きこもることは避けてください(外出禁止れではありませんので)。


どうしても寒い冬場はそれでいても、運動量が減り、また、温かい室内で食っちゃ寝の生活をしてしまいがちで、メタボにシフトしてしまう要素が多いように思います。暖かい日、暖かい時間帯を選んで体を動かすようにしてください。
診察中にもよく、コロナが怖くてというお話を再び伺うようになりました。当院では密を避ける工夫を、可能な限り施行してまいりました。年明けからは、より換気を徹底するとともに、リモートの順番予約制度を導入し、待合での密を極力避けれるように工夫しております。どうぞご利用ください。


ふるやまクリニックでは、本年も変わらず、皆さんの日常生活の質の向上と、健康な日々を祈念しております。上手に環境をおつくりになって、体を動かし、体調を整え、日々のケアを怠らないようにお願い申し上げます。

メタボリックな疾患 その2高血圧

高血圧症は脳卒中、心臓病、腎臓病、大血管疾患(動脈瘤など)の強力な原因になっています。
血圧管理を必要とする対象者は血圧が140/90以上の高血圧患者、130~139/80~89の高血圧値の方、血圧上昇に伴い脳心血管系病のリスクが上昇する120/80以上の人 これがすべて対象になります。

我が国の高血圧に起因する脳心臓血管障害による死亡数は年10万人と推定され、収縮期血圧(高いほうの血圧)がより脳血管心臓血管の障害に関与しているデータがあります。

我が国の高血圧患者は4300万人と推定され3100万人が管理不良であるといわれています。自らの高血圧を自覚していない人が1400万人、知っているが放置している人が450万人、薬物治療を受けているが管理不良な人が1250万人いると推定されています。


わが国では食塩摂取が依然として過剰気味でありそれに加えてメタボリックシンドロームによる高血圧も増加しています。
血圧が高く、高血圧を改善する薬をもらった時に血圧を測定するように医療機関で言われると思いますが、標準的な測定方法はご存じでしょうか。
ガイドラインで推奨されている方法はやや堅苦しい感じがすると思います。
血圧の基準は家庭血圧を標準とします。原則2回測定し平均値を記載します。朝晩毎日1回ずつ測定するのが基本です。

外来で愚直にこう申し上げると、多くの方はうんざりした感じになってしまうので、私は『週のうち2.3回でもいいので、ランダムな時間で測ってください』ということが多いです。もちろんデータは多いほうがいいのですが継続していただくことが大事なので、患者さんとの話し合いで決めることが多いです。

診察室と家庭と24時間自由行動での血圧値はそれぞれ違う基準が設定されています。
診察室血圧は140/90、家庭血圧は135/85を基準値とし、家庭血圧を優先して考慮します。

高血圧の型もいろいろあります。日本人に多いのが早朝高血圧のタイプで、降圧薬服用者にも多い高血圧の型です。この中でモーニングサージと言って極端に朝の血圧が上がる方は血管系の障害を起こす可能性が高く注意が必要です。

血圧を下げる目安ですが、75歳以上、脳血管障害あり、慢性腎障害あり(たんぱく尿なし)の場合は140/90未満が目標です。75歳未満、脳血管障害あり、慢性腎障害(たんぱく尿あり)、糖尿病、高血栓薬(血をサラサラにする薬)を服用中の場合は130/80未満を目標にします。
服薬の原則は1剤からですが、20mgHg 以上の降圧を目的にする場合は併用することもあります。
降圧は収縮期血圧(高いほうの血圧のこと)を120までに設定することが望ましいです。


血圧に対する生活習慣上のケアの方法は、1)減塩(1日6g以下)2)野菜果物を積極摂取する。多価不飽和脂肪酸や低脂肪乳製品の積極的摂取をおこなう。飽和脂肪酸、コレステロールの摂取を控える。3)有酸素運動を毎日30分ないしは週180分以上行う。4)節酒 5)禁煙
があげられます。こちらは降圧薬の内服のいかんにかかわらず必要です。

当院では、整形外科疾患の患者さんも多いので、運動器の障害を主に治療されることも多く、薬剤として血圧をあげてしまうものとして、ロキソニンなどのNSAIDといわれる消炎鎮痛薬やグリチルリチンを含む芍薬甘草湯などの漢方薬は頻用します。こちらは注意が必要となってきます。えてして、ロキソニンなどはうかつに長期使用してしまいがちな薬剤(腎機能障害や消化管粘膜障害もあるので本当は注意していただきたいです)です

以上生活習慣に密着した、最もポピュラーな疾患である高血圧の大まかな説明をさせていただきました。あまりに短すぎてきっちりとした説明もできないまま診療が継続してしまう場合もあるでしょう。この文章が参考になれば幸いです。

風邪の季節の ちょっと漢方

皆さんこんにちは。
めっきり寒くなりました。ほんの少し前までは信じられないくらい暑かったのに。
季節の変わり目で寒暖差も大きく 体調も崩しやすい季節ですね。
クリニックの患者さんの中には喘息発作が出ている方も、よくお見受けするようになりました。
安定したぜんそくで、ステロイドが嫌な方には漢方薬の投与も有効なのですが、それはまたのお話として、今回は、風邪の引き始めの漢方薬を使った上手な対応のお話をしようと思います。

日本で使用している漢方薬の多くは、その源が中国の傷寒論という医学書に基づいています。傷寒論は何千年も前に、中国で感染症にたちむかうすべを記した医学書です。当時は抗生物質やワクチン、抗ウイルス薬もなく、感染の原因すらわかっていなかった時代です。まるで今の新型コロナウイルスに振り回されている私たちの環境とそっくりですね。
そんな時代背景の知恵は、大変役に立つと思いますのでちょっとお話してみようと思います。

感染は予防が大切です。予防としては体の抵抗力を上げることが必要です。体温の低下は免疫力の低下につながるので、腎虚になって元気がなくなっている場合は補腎(腎の力を補う)
剤としての八味地黄丸牛車腎気丸で代謝を上げるのが良いでしょう。また体のエネルギーである気を補うことも大切で、補中益気湯六君子湯人参湯などもよいでしょう。

かかったかなと思った時が勝負です。かかったかなと思ったら何とか  という宣伝が昔ありましたが、まさにその時が勝負時です。寒気がするとき、この時は敵が強い時で葛根湯麻黄湯で体温を急上昇させ免疫力を最大限までアップし一次防衛線を築くことです。風に当たると寒気がする程度なら桂枝湯がちょうどよいです。いずれも体温をあげて外敵を駆逐する準備態勢をとるので、体を温めてしっかり休むことは欠かせません。薬を飲んだから動いても大丈夫は、無茶な話です。
ほら来た、という感じでなくても、なんだかなあという調子の時、ちょっと風邪に向かっているかものときは桂枝湯が適当でしょう。
のどのチリチリや乾燥していがらい時は、麻黄附子細辛湯桔梗湯が適切です。

一次ラインを突破されたときは、漢方薬でも対処法があげられていますが、あまりぱっとしません。日本で許されている量が少ないせいもあるでしょうが、西洋薬の対症療法のほうがよく聞くと思います。なお、今回もロキソニンなどの解熱剤が悪者にされていますが、一次ラインを突破されて発熱が確定してしまった場合には、体力温存のため使用したほうがいいと思います。

もちろん本格的な風邪症状に対する漢方薬も多種多様にそろっているので、ご希望があれば診察の上処方いたします。現代の総合感冒薬のような処方もあります。
鼻水専用、鼻づまり専用、鼻の奥のほうが腫れぼったいの専用、鼻汁が喉の奥に流れていくもの専用、のどの痛み専用、咳専用、気管支炎専用、解熱、発熱による脱水の緩和など、西洋薬を補助する薬剤はたくさんあります。

病後のお疲れ感が取れない場合にも、柴胡桂枝湯などをベースとした治療をおこなうと楽に経過することが多いです。

私的には、漢方薬の効果としては出会いがしら、一次防衛線での勝率の高さが気に入っています。経験的なお話で恐縮ですが、インフルエンザなどの強い外敵でも、うまくフィットすれば勝率50%はあるのではないでしょうか。(もちろん飲んどけばいいというわけではないですよ、くれぐれも間違わないでくださいね)
そのあたりが魅力で漢方薬の世界に引き込まれていったこともあります。
私はいつも、漢方薬で体の抵抗力、免疫力を上げ、かかったかなに備え葛根湯などの武器を持ち歩いています。
正直なところ、いまはコロナウイルスに対抗する医学的処置はないので、利用できるものはなんでも使うということで、身を守っていくことも大切なのではないでしょうか。

理学療法士による治療の重要性 ~ハイドロリリースと手のコラボレーション~

みなさんこんにちは。
異常な暑さが去って、ようやく一息つく涼しさになってきましたね。朝は少し肌寒さを感じる時期になりました。

さて、当院に理学療法士さんがやってきて早くも2か月近くがたとうとしています。
療法士さんの人柄と、治療の確からしさのおかげで、患者さんからも重宝がっていただき、本当によかったなと思っています。

当院の疼痛治療の大きなテーマとして、エコーガイド下のハイドロリリースを掲げております。そして、開業以来、何とかハイドロリリースに理学療法を組み合わせて診療していけないか、体制を整えようと腐心してまいりました。
なぜ、それほど理学療法に執心するのか。


わたしが理学療法士による治療にこだわる理由は、従来の投薬や物理療法、さらにはハイドロリリースをもってしても、医師として私ができる患者さんへの治療介入に限界を感じているからなのです。

医師の治療だけだと、治療は注射と投薬が中心で、あとは機械による物理療法(いわゆる電気治療)になってしまいます。その場合、多くの腰痛や、四十肩五十肩、股関節痛に対しては今一歩決め手に欠く感じがして、治療が届いていないように思います。

あとは患者さんに生活習慣とストレッチや体操を指導することになりますが、痛みのある患部やその周辺を十分に動かさないと、慢性の痛みに関しては改善につながりません。

理学療法士は、その部分に重点的に介入ができます。動きの悪くなった関節や、筋肉、靱帯を徐々に動かして可動性を獲得させる(モビライゼーション)ような治療を施していきます。医師だけで提供できる医療
問題点を診断し、薬剤を内服(飲み薬)、外用(シップなど)、注射(局所注入)し、大きな範囲では機械による物理療法で血流を改善したりほぐしたりして、小さな範囲では理学療法士が手によって調整する。
このような治療スタイルが、町のクリニックで提供できる最大限の治療と考えています。

当院ではエコーを最大に活用した診断とハイドロリリース手技に基づき四十肩、五十肩(肩関節周囲炎)治療を行っていますが、こちらも理学療法士による治療と合わせることによってこれまでの治療の限界点を超えることが可能になりました。
ハイドロリリースに関しましては、HP内やブログでもお示ししておりますが、簡単に申し上げますと、慢性疼痛のある部分では筋肉同士や神経と周囲組織が癒着していることが多く、液体をその部位に注入することで癒着を剥離し疼痛が軽快すると考えられています。したがって、問題の部分の癒着をはがして、可動性を確保することが大変重要になります。何度も繰り返すことになりますが、癒着を注射ではがすのと人の手ではがすことを両方行うことで強い相乗効果を生み出すことが可能になるわけです。

肩関節の患者さんの治療の流れとしては、まずは診察室で肩の機能や状態を徒手検査とレントゲン、エコーで調べた後に、ハイドロリリースと患者さん自身のストレッチのみで治療を開始します。これだけで解消してしまわれる方が大変多いのですが、中には肩関節の癒着が強い方も少なからずおられて、改善の程度を見ながら理学療法士の治療が並行して始まります。
治療の目標としては、まずは日常生活をある程度問題なく送れる程度に改善することを目指しますが、運動をされていたり、ダンスなどで大きな可動域が必要となる方がおられたり、またお仕事で十分な肩関節の運動が必要とされる方もおられ、その用の場合には、肩の手術をする前にできる限り私たちのクリニックで治療の限界に臨むことにしております。

大部分の腰痛症、臀部痛では、筋肉の拘縮と、骨格のアライメント(並び)の不整(よく、骨盤のゆがみなどと表現されているのでしょうか、一般には)が原因となっていますが、ここでもハイドロリリースと理学療法士のコラボレーションは必須となってきます。トラブルの中心となっている関節や、筋肉・腱の付着部をハイドロリリースし、周辺のモビライゼーションを手によって行うことで、理学療法だけでも、ハイドロリリース単独でも到達できない治療域へ達することが可能になります。
腰痛のある患者さんの、腰痛の理由は本当に多種多様で、骨格が関係しているもの、筋肉に理由があるもの、骨格が筋肉や神経に影響を与えているもの、背骨の周囲の筋肉や靱帯、その他の結合組織が外傷や加齢によって弱くなったために神経やその周囲組織を傷害して起きるもの、構造的な変化は全く関係ないがんの転移や感染症もその理由になります。
まずは、レントゲンで骨格を確認しながら、身体診察とともに疼痛部位をエコーで確認しながら、疾患の状況を想定していきます。疼痛をきたす部位がターゲットでき、ハイドロリリースが適切な処置であると判断した場合はまず、注射でリリースを行うとともに、消炎鎮痛剤を投与し、理学療法士によって当該部位周囲のアライメントの調整やストレッチ、用手的な剥離などを行います。
骨格が関与している場合はコルセットのような装具を併用することもありますし、神経が関与していそうな場合は積極的にMRIを行って診断と治療につなげています。

腰痛とおなじくらいか、場合によってはまだ多いと思われるのが臀部痛です。
誰でも知っている腰椎疾患である腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症による腰痛や臀部痛の診断を受けておられる方が大変多いようおみうけします。また、有名な疾患である坐骨神経痛として認識されている方もたくさんおられます。いずれにしても、とてもしつこい痛みに悩まされている方がおおく、疼痛部位へのトリガーポイント注射を希望される患者さんもたくさんおられます。
臀部に疼痛をきたす異常としては、椎間板性の疼痛、椎間関節性の疼痛、脊柱起立筋のコンパートメント症候群、仙腸関節炎などがあり、これらの疾患は下肢の症状を伴う場合もよくあります。そのため、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症における神経障害と区別しづらい場合も多いため、その診断にひきずられて個々の異常が顧みられなくなってしまっている場合が多いように思います。


さらには、骨盤の上部に痛みをきたす上殿皮神経障害、梨状筋周囲に疼痛をきたす、上殿神経障害や梨状筋症候群など、臀部そのものに異常がある疾患もたくさんあります。いずれもトリガーポイント注射や、ハイドロリリースでの剥離と理学療法がセットで効果を示す疾患がたくさん存在しています。

腰痛、臀部痛や肩関節の異常だけでなく、変形性膝関節症や股関節痛、いわゆる肩こりにもハイドロリリースと理学療法のコンビネーションは威力を発揮します。

現在、理学療法士による治療は週のうち2日だけですが、漸次治療可能な日にち、時間を拡大してまいります。そして、ハイドロリリース+理学療法を診療時間内ならいつでも受けていただけるように、保険診療制度の面からも体制づくりを進めていく所存でございますので、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

足が腫れる、むくむ   あなたのからだになにがおこっている?

みなさんこんにちは。

今日は、外来でよく質問される内容に関してお話したいと思います。最近足がむくんでとか、以前から足がむくむんですけどなどと、本当に頻繁にご質問があります。

まず、わたしたちが足のむくみを見たときにどのように考えるかをご説明します。

大事な判断のポイントとしては
#1 左右差があるかどうか
#2 腫れ(炎症)ではないかどうか
です。

左右差がある場合は、血管性の障害を思い浮かべます。血管がどこかで詰まっているのではないかと考え、検査を行います。簡便で情報が多いのがエコー検査でしょう。
また、炎症性かどうかも大変大事なポイントです。もっとも危険な腫れは細菌感染による皮下組織の炎症である蜂窩織炎です。蜂窩織炎は感染を起こしている部位の近くに感染の原因となるけがや病変があるのが普通ですが、全く見当もつかない場合もあり診断が難しい場合も少なくありません。治療は抗生物質の投与が中心となりますが、多くの場合静脈内投与が必要となってきます。また、場合によっては入院治療を必要とすることもあります。

まずは、おおきなふるい分けをした後に、臓器別の障害がないかを検討していきます。

チェックすべき部分は


1) 心臓
2) 腎臓
3) 甲状腺
4) 足の静脈
です。

心電図や血液検査、胸部レントゲン検査、超音波検査を行い、それぞれの臓器の機能障害の程度を診断します。
臓器の機能が問題ない場合は


1) 飲んでいる薬の副作用がないか
2) 以前にかかった病気はないか
を再度チェックしなおします

比較的身近な薬剤では、降圧薬(血圧を下げる薬)の一部、鎮痛薬の一部、糖尿病薬の一部にむくみの副作用があります。それらの服用歴がないかを中心に調べますが、これらの薬剤以外にもむくみを引き起こす可能性がある薬剤はありますのでチェックが必要になります。
以前にかかった疾患で影響のありそうなものとしては脳卒中、肝疾患などがあげられます。


脳卒中によって麻痺が生ずると、運動障害がおこるため麻痺がある部分の筋力低下がおこり筋肉によるポンプ機能が低下し局所に水分がたまりやすくなります。また、麻痺のため運動が低下すると血栓を形成しやすくなります。
肝疾患によって肝機能が低下すると、体に必要なたんぱくを合成する能力が低下し、血液中のたんぱく濃度が低下することがあります。たんぱく濃度の低下が起こると、水分を血液中に保てなくなり血管から組織へ血液中の水分が漏れ出て、むくみの原因になります。

今までのふるいにかからなかった方は、廃用性浮腫ということになります。
そもそも、健康な時、心臓から供給された血液は足まで到達した後、下腿の筋肉の収縮によって心臓へ戻っていく構造になっています。
下腿の筋肉が疲弊してくると筋肉のポンプ作用が発揮できなくなってふくらはぎを中心に水分が貯留します。報告によれば片方で数100CCも貯留可能であるとのことで、これが夜間頻尿の原因の一つになっているとの報告もあります。
いずれにせよ、年齢とともにやってくる、筋肉量減少(サルコペニア)や運動障害(ロコモティブ症候群)によくみられる出来事ですので、いつまでもご自身の足で歩いていただきたい当院といたしましては、やはり筋力を保つために一日10分で結構ですのでウォーキングをお願いしたい次第です。
以上が、足のむくみの大筋になります。


足のむくみが気になるとき方はお気軽にいちどご相談ください。

脂肪肝はこわいですよ。

むかしは肝臓病といいますと、肝炎ウイルスによるウイルス性肝炎やお酒の飲み過ぎによるアルコール性肝障害が第一でしたが、最近ウイルスやアルコールが原因とならない、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が増加してきています。それらは、進行すると肝硬変や肝がんになる恐れもあります。


私は以前、肝臓外科医として、肝臓の悪性腫瘍と長年向き合っておりましたが、近年はNAFLD由来の肝臓がんの方が増加してきており、ウイルス性やアルコール性肝障害がベースにある方と異なり、病気として認識されていない方が突如肝がんに見舞われる感じがあって、スクリーニングをするのが大変になってくるなと感じていました。
後から述べますが、脂肪肝の患者数は大変おおく(人口の30%以上)、その全体を肝がん予防として調査するのは大変なことになってしまいます。やはり、脂肪肝にならないことが重要で、脂肪肝を予防することがカギになると考えます。
さて、「脂肪肝」という言葉は多くの方に知られていますが、原因のひとつは飲酒による脂肪肝です。これに対し、お酒を飲まないのに発症する脂肪肝を非アルコール性脂肪肝とよびます。
生活習慣の乱れや内臓肥満、ストレス、昼夜逆転の仕事などが原因で脂肪肝が生じます。そうなると、顕微鏡で見た場合に、肝細胞のなかに油の粒が溜まってきます。
この段階ではまだ肝臓の細胞の多くは壊れていません。しかし、非アルコール性脂肪肝を放っておくと、だんだん肝臓の中の環境が悪くなり、肝細胞が風船のように膨らんで、細胞は壊れてしまいます(風船化)。働かなくなった肝細胞を片付けるために肝臓で炎症が起こり、それが長い時間続くことによって肝臓が硬くなる、線維化という現象が起きることがあります。これが、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)です。
現在、国内での正確な患者数はわかっていませんが、人間ドックを受ける人で非アルコール性脂肪肝に罹患している人が30~40%であることから、推定で1000万~2000万人の潜在患者がいると考えられています。非アルコール性脂肪肝炎に進展するのはそのうちの10~20%に相当する100~200万人位と考えられています。
非アルコール性脂肪肝から非アルコール性脂肪肝炎を発症し、進行すると肝臓の細胞が長い時間壊れ続け、次第に線維化を起こし肝臓はだんだん硬くなっていきます。さらにこれを放置すると、10年後には約1~2割が肝硬変になります。肝硬変にまで進行すると年率で数%に肝がんが発生すると言われています。
障害を受けた肝細胞をもとに肝臓がんが発生するわけですので、この100~200万人が少なくとも肝がんの予備軍となるわけです。これは大変なことですね。
メタボリック症候群があからさまにがんと直結する例といっても過言ではないでしょう。これは、軽視できない事態であると思います。

メタボ肝臓病である脂肪肝は、もちろんほかのメタボ疾患と強力に結びついており、糖尿病や高血圧症、脂質異常症等といった生活習慣病や脳梗塞や心筋梗塞の原因と言える動脈硬化とも強い関連があります。
まずは糖尿病との関連ですが、非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪肝炎は血糖値の異常や2型糖尿病と強い関連があります。
人間ドックで空腹時の血糖が110 mg/dL以上の受診者のおよそ半数が、さらに空腹時血糖が126 mg/dL以上の受診者の68%が非アルコール性脂肪性肝疾患を有していたと報告されています。
また非アルコール性脂肪性肝疾患での糖尿病の有病率は47.3%で、糖尿病患者は肝硬変するリスクが何もない患者に比べて2.4倍高いと報告されています。


高血圧症の場合ですが、非アルコール性脂肪性肝疾患における高血圧症の合併頻度は、約30~50%で、動脈硬化や心臓病のリスクであり、相互にリスク関係が存在するといわれています。
やはり脂肪ですので、脂質異常症とは当然のように深い関係があります。
高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高中性脂肪血症などを総じて脂質異常症と言いますが、脂質異常症は非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪肝炎の有病率を上昇させることが知られています。

非アルコール性脂肪性肝疾患における脂質異常症の合併頻度は、約50%と報告されています。人間ドックを対象とした過去の報告では、高LDLコレステロール血症を有する受診者の38.5%が非アルコール性脂肪性肝疾患を合併し(正常者では26.4%)、低HDLコレステロール血症を有する受診者の61.7%(正常者では27.3%)、高中性脂肪血症を有する受診者の59.5%(正常者では22.8%)が非アルコール性脂肪性肝疾患を合併しています。
脂肪肝を診断するには、血液検査では非常に困難です。

 

きっかけとしては
1)自分のおなかの周り(腹囲)をはかる
男性ではウエストが85センチ以上、女性は95センチ以上の場合、脂肪肝を持っている人が半数以上となります。10kg以上増えているという方も要注意です。
2)糖尿病、高血圧、脂質異常症がある場合

となりますが、最終的な診断は腹部超音波検査で肝臓を調べることになります。腹部超音波検査を行いますと脂肪肝がある場合は肝臓がたまった脂肪によって輝いて見えます。また、隣の腎臓と輝きを比較して判断します。同時に、肝臓の形態の変化や、腫瘍を伴っていないかも被爆することなしに調べられて大変簡単でよい診断法であると思います。

治療としてまず挙げられるのは生活改善でしょう。


とくに、食習慣や運動、睡眠などを改善する必要があります。食事はバランスよく、一日の総摂取カロリーを適正に保つことが有効です。極端な炭水化物制限食や脂肪制限食などの効果は分かっていません。食事運動療法で7%痩せれば、非アルコール性脂肪肝炎は改善するという報告があります。また、10%の減量で、肝臓の線維化も改善すると報告されています。
運動は1週間に150分以上が望ましいとされていますが、1日10分でもいいので、体を余計に動かすことです。筋肉は第2の肝臓と言われ、筋肉が増えると代謝がよくなります。


運動は、軽く汗をかく程度の有酸素運動がよいと言われていますが、レジスタンス運動と言って、じっくり筋肉を鍛える運動(スクワットやもも上げなどの「筋トレ」)も効果があると言われています。腰や膝が痛いひとは、椅子に座って上半身だけの体操でも効果があります。
食事は、過剰な糖質や脂肪分の摂取を控えましょう。ジュースや清涼飲料水のとりすぎはもちろん、ビタミンの摂取に良いと思ってついつい食べ過ぎてしまう果物も果糖の過剰摂取につながりますので注意します。一方では、緑黄色野菜はビタミンやミネラルの摂取のためにたくさん食べるようにしたいものです。
また食物繊維も十分に摂るように心がけましょう。食物繊維は、満腹感を助け、トータルの食事カロリー摂取量を減らすだけでなく、摂取した糖質の腸管からの吸収を緩やかにする働きがあり、肝臓への負担を減らしますのでオススメです。
そうはいうものの、食事療法や生活改善は大変苦しいもので、なかなか長続きしないのも現実にある問題です。そのばあいどうしても薬物に頼って問うことになります。

薬物療法として、例えば糖尿病や脂質異常症、高血圧症合併がある場合は、それらの基礎疾患に対する治療薬で非アルコール性脂肪性肝疾患にも効果が期待されているものがあります。基礎疾患がなければビタミンE(抗酸化剤)も期待できます。
また、非アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎そのものへの治療薬は、肝臓の炎症や線維化(硬くなる)を抑える薬などが我が国をはじめ世界中で現在開発が進められていますが、現時点では実際に効果が認められた特効薬はありません。
薬物療法を選択する場合でも、生活習慣の改善なしで取り組んでもなかなかいい結果が出ませんので、どちらも車の両輪として考えていただきたいと思います。
意外に顧みられていない様子の脂肪肝ですが、結構怖いですよ。地域の健康を担う開業医としては、皆さんに積極的に健康診断や特定健康診査を受けていただき、早め早めに危険の目を積んでいただきたいです。

運動と健康を愛するあなたはスポーツ内科をご存じでしょうか

 

皆さんこんにちは。猛暑とコロナのため、スポーツどころではないよとおっしゃる方も多いかもしれませんが、今回は少し耳慣れないお話をしてみようと思います。
お題はスポーツ内科です。


当院は内科を第一標榜としておりますが、継承させていただきましたクリニックさんが整形外科メインでしたので、整形外科疾患の方も数多く来院されております。


スポーツといいますと、誰しもが、筋骨格系の障害をイメージし、かかる医療機関は整形外科という印象を持つと思います。

血液まで調べてメンテナンスするのは、トップアスリートだけという感覚は誰しもがお持ちかと思いますが、健康志向が強くなっている昨今では、低年齢から高齢者まで幅広い方が何らかのスポーツを常時愛好されている状況になっています。


疾患をお持ちで、病院に通いながら、あるいは、年1回の健康診断を受けておられてスポーツを愛好している方は、内科的なメンテナンスを受けながら運動しているのである意味、スポーツ内科受診者と考えてよいでしょう。
問題は、検診などに縁がない若年層のスポーツ愛好家です。特にクラブ活動などを熱心に行っている年齢層に注意が必要であると思います。

息切れ、走ると咳が出る、疲れが抜けない、運動するとおなかが痛くなる、無月経になった、胸が苦しいなどが運動愛好家から外来で寄せられやすい症状になります。
以下に、代表的な症状を上げて説明していきます。
息切れは、循環器系、呼吸器系の異常がないかを調べますが、その際にスポーツ貧血を考慮する必要があります。


スポーツ貧血とはスポーツによって生じる貧血で、有病率は5から20%と言われています。原因としては鉄欠乏と利用可能エネルギー不足(RED-S)が上がります。治療としては栄養管理と鉄剤投与が行われます。

走ると咳が出る場合は運動誘発性気管支収縮(EIB)を考慮しなければなりません。喘息がなくても発症する可能性があります。一般集団で20%程度の有病率があると考えられ、持久系の種目において有病率が高いといわれています。治療は、運動前の十分なウォーミングアップと吸入療法になります。吸入薬にはドーピングで問題になる薬剤もあるので注意が必要です。


運動時におなかが痛くなる場合はETAP(運動関連性一過性腹痛、サイドスティッチ)を考慮します。予防としては、運動開始前2時間以内の食事摂取に気を付けること、炭酸や高張液の接種を控えることが必要です。

疲れが抜けない場合は、過剰なトレーニングの繰り返しのためパフォーマンスが落ちている可能性を検討しなければなりません。慢性疲労状態が継続し、場合によっては回復に数か月を要することもあります。トレーニングとしての理想形は負荷をかけたトレーニングの回復過程に起きる超回復期を利用して次の負荷をかけ、運動強度・耐要性を増強させることです。超回復期を待たずに負荷をかけ続けると過剰なトレーニングになってしまいます。これをオーバートレーニング症候群(OTS)と呼び、OTSの精神症状はうつ状態と大変類似しています。明確な診断基準はありませんが、気分障害をともなう原因不明のパフォーマンス低下で4週間程度休養を取ってもパフォーマンスが戻らないことが症状として挙げられています。治療は完全休養とストレスの除去になります、場合によっては精神科医のサポートも必要となってきます。


これらの様々な症状が、スポーツに伴い生じてくる可能性があり、どうしようもなく悩んでいる方も多いと思います。悩まずにぜひご相談ください。運動に伴う体の障害は、筋肉や骨だけではないことを意識していただければ幸いです。