カテゴリー別:内科

足が腫れる、むくむ   あなたのからだになにがおこっている?

みなさんこんにちは。

今日は、外来でよく質問される内容に関してお話したいと思います。最近足がむくんでとか、以前から足がむくむんですけどなどと、本当に頻繁にご質問があります。

まず、わたしたちが足のむくみを見たときにどのように考えるかをご説明します。

大事な判断のポイントとしては
#1 左右差があるかどうか
#2 腫れ(炎症)ではないかどうか
です。

左右差がある場合は、血管性の障害を思い浮かべます。血管がどこかで詰まっているのではないかと考え、検査を行います。簡便で情報が多いのがエコー検査でしょう。
また、炎症性かどうかも大変大事なポイントです。もっとも危険な腫れは細菌感染による皮下組織の炎症である蜂窩織炎です。蜂窩織炎は感染を起こしている部位の近くに感染の原因となるけがや病変があるのが普通ですが、全く見当もつかない場合もあり診断が難しい場合も少なくありません。治療は抗生物質の投与が中心となりますが、多くの場合静脈内投与が必要となってきます。また、場合によっては入院治療を必要とすることもあります。

まずは、おおきなふるい分けをした後に、臓器別の障害がないかを検討していきます。

チェックすべき部分は


1) 心臓
2) 腎臓
3) 甲状腺
4) 足の静脈
です。

心電図や血液検査、胸部レントゲン検査、超音波検査を行い、それぞれの臓器の機能障害の程度を診断します。
臓器の機能が問題ない場合は


1) 飲んでいる薬の副作用がないか
2) 以前にかかった病気はないか
を再度チェックしなおします

比較的身近な薬剤では、降圧薬(血圧を下げる薬)の一部、鎮痛薬の一部、糖尿病薬の一部にむくみの副作用があります。それらの服用歴がないかを中心に調べますが、これらの薬剤以外にもむくみを引き起こす可能性がある薬剤はありますのでチェックが必要になります。
以前にかかった疾患で影響のありそうなものとしては脳卒中、肝疾患などがあげられます。


脳卒中によって麻痺が生ずると、運動障害がおこるため麻痺がある部分の筋力低下がおこり筋肉によるポンプ機能が低下し局所に水分がたまりやすくなります。また、麻痺のため運動が低下すると血栓を形成しやすくなります。
肝疾患によって肝機能が低下すると、体に必要なたんぱくを合成する能力が低下し、血液中のたんぱく濃度が低下することがあります。たんぱく濃度の低下が起こると、水分を血液中に保てなくなり血管から組織へ血液中の水分が漏れ出て、むくみの原因になります。

今までのふるいにかからなかった方は、廃用性浮腫ということになります。
そもそも、健康な時、心臓から供給された血液は足まで到達した後、下腿の筋肉の収縮によって心臓へ戻っていく構造になっています。
下腿の筋肉が疲弊してくると筋肉のポンプ作用が発揮できなくなってふくらはぎを中心に水分が貯留します。報告によれば片方で数100CCも貯留可能であるとのことで、これが夜間頻尿の原因の一つになっているとの報告もあります。
いずれにせよ、年齢とともにやってくる、筋肉量減少(サルコペニア)や運動障害(ロコモティブ症候群)によくみられる出来事ですので、いつまでもご自身の足で歩いていただきたい当院といたしましては、やはり筋力を保つために一日10分で結構ですのでウォーキングをお願いしたい次第です。
以上が、足のむくみの大筋になります。


足のむくみが気になるとき方はお気軽にいちどご相談ください。

脂肪肝はこわいですよ。

むかしは肝臓病といいますと、肝炎ウイルスによるウイルス性肝炎やお酒の飲み過ぎによるアルコール性肝障害が第一でしたが、最近ウイルスやアルコールが原因とならない、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が増加してきています。それらは、進行すると肝硬変や肝がんになる恐れもあります。


私は以前、肝臓外科医として、肝臓の悪性腫瘍と長年向き合っておりましたが、近年はNAFLD由来の肝臓がんの方が増加してきており、ウイルス性やアルコール性肝障害がベースにある方と異なり、病気として認識されていない方が突如肝がんに見舞われる感じがあって、スクリーニングをするのが大変になってくるなと感じていました。
後から述べますが、脂肪肝の患者数は大変おおく(人口の30%以上)、その全体を肝がん予防として調査するのは大変なことになってしまいます。やはり、脂肪肝にならないことが重要で、脂肪肝を予防することがカギになると考えます。
さて、「脂肪肝」という言葉は多くの方に知られていますが、原因のひとつは飲酒による脂肪肝です。これに対し、お酒を飲まないのに発症する脂肪肝を非アルコール性脂肪肝とよびます。
生活習慣の乱れや内臓肥満、ストレス、昼夜逆転の仕事などが原因で脂肪肝が生じます。そうなると、顕微鏡で見た場合に、肝細胞のなかに油の粒が溜まってきます。
この段階ではまだ肝臓の細胞の多くは壊れていません。しかし、非アルコール性脂肪肝を放っておくと、だんだん肝臓の中の環境が悪くなり、肝細胞が風船のように膨らんで、細胞は壊れてしまいます(風船化)。働かなくなった肝細胞を片付けるために肝臓で炎症が起こり、それが長い時間続くことによって肝臓が硬くなる、線維化という現象が起きることがあります。これが、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)です。
現在、国内での正確な患者数はわかっていませんが、人間ドックを受ける人で非アルコール性脂肪肝に罹患している人が30~40%であることから、推定で1000万~2000万人の潜在患者がいると考えられています。非アルコール性脂肪肝炎に進展するのはそのうちの10~20%に相当する100~200万人位と考えられています。
非アルコール性脂肪肝から非アルコール性脂肪肝炎を発症し、進行すると肝臓の細胞が長い時間壊れ続け、次第に線維化を起こし肝臓はだんだん硬くなっていきます。さらにこれを放置すると、10年後には約1~2割が肝硬変になります。肝硬変にまで進行すると年率で数%に肝がんが発生すると言われています。
障害を受けた肝細胞をもとに肝臓がんが発生するわけですので、この100~200万人が少なくとも肝がんの予備軍となるわけです。これは大変なことですね。
メタボリック症候群があからさまにがんと直結する例といっても過言ではないでしょう。これは、軽視できない事態であると思います。

メタボ肝臓病である脂肪肝は、もちろんほかのメタボ疾患と強力に結びついており、糖尿病や高血圧症、脂質異常症等といった生活習慣病や脳梗塞や心筋梗塞の原因と言える動脈硬化とも強い関連があります。
まずは糖尿病との関連ですが、非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪肝炎は血糖値の異常や2型糖尿病と強い関連があります。
人間ドックで空腹時の血糖が110 mg/dL以上の受診者のおよそ半数が、さらに空腹時血糖が126 mg/dL以上の受診者の68%が非アルコール性脂肪性肝疾患を有していたと報告されています。
また非アルコール性脂肪性肝疾患での糖尿病の有病率は47.3%で、糖尿病患者は肝硬変するリスクが何もない患者に比べて2.4倍高いと報告されています。


高血圧症の場合ですが、非アルコール性脂肪性肝疾患における高血圧症の合併頻度は、約30~50%で、動脈硬化や心臓病のリスクであり、相互にリスク関係が存在するといわれています。
やはり脂肪ですので、脂質異常症とは当然のように深い関係があります。
高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高中性脂肪血症などを総じて脂質異常症と言いますが、脂質異常症は非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪肝炎の有病率を上昇させることが知られています。

非アルコール性脂肪性肝疾患における脂質異常症の合併頻度は、約50%と報告されています。人間ドックを対象とした過去の報告では、高LDLコレステロール血症を有する受診者の38.5%が非アルコール性脂肪性肝疾患を合併し(正常者では26.4%)、低HDLコレステロール血症を有する受診者の61.7%(正常者では27.3%)、高中性脂肪血症を有する受診者の59.5%(正常者では22.8%)が非アルコール性脂肪性肝疾患を合併しています。
脂肪肝を診断するには、血液検査では非常に困難です。

 

きっかけとしては
1)自分のおなかの周り(腹囲)をはかる
男性ではウエストが85センチ以上、女性は95センチ以上の場合、脂肪肝を持っている人が半数以上となります。10kg以上増えているという方も要注意です。
2)糖尿病、高血圧、脂質異常症がある場合

となりますが、最終的な診断は腹部超音波検査で肝臓を調べることになります。腹部超音波検査を行いますと脂肪肝がある場合は肝臓がたまった脂肪によって輝いて見えます。また、隣の腎臓と輝きを比較して判断します。同時に、肝臓の形態の変化や、腫瘍を伴っていないかも被爆することなしに調べられて大変簡単でよい診断法であると思います。

治療としてまず挙げられるのは生活改善でしょう。


とくに、食習慣や運動、睡眠などを改善する必要があります。食事はバランスよく、一日の総摂取カロリーを適正に保つことが有効です。極端な炭水化物制限食や脂肪制限食などの効果は分かっていません。食事運動療法で7%痩せれば、非アルコール性脂肪肝炎は改善するという報告があります。また、10%の減量で、肝臓の線維化も改善すると報告されています。
運動は1週間に150分以上が望ましいとされていますが、1日10分でもいいので、体を余計に動かすことです。筋肉は第2の肝臓と言われ、筋肉が増えると代謝がよくなります。


運動は、軽く汗をかく程度の有酸素運動がよいと言われていますが、レジスタンス運動と言って、じっくり筋肉を鍛える運動(スクワットやもも上げなどの「筋トレ」)も効果があると言われています。腰や膝が痛いひとは、椅子に座って上半身だけの体操でも効果があります。
食事は、過剰な糖質や脂肪分の摂取を控えましょう。ジュースや清涼飲料水のとりすぎはもちろん、ビタミンの摂取に良いと思ってついつい食べ過ぎてしまう果物も果糖の過剰摂取につながりますので注意します。一方では、緑黄色野菜はビタミンやミネラルの摂取のためにたくさん食べるようにしたいものです。
また食物繊維も十分に摂るように心がけましょう。食物繊維は、満腹感を助け、トータルの食事カロリー摂取量を減らすだけでなく、摂取した糖質の腸管からの吸収を緩やかにする働きがあり、肝臓への負担を減らしますのでオススメです。
そうはいうものの、食事療法や生活改善は大変苦しいもので、なかなか長続きしないのも現実にある問題です。そのばあいどうしても薬物に頼って問うことになります。

薬物療法として、例えば糖尿病や脂質異常症、高血圧症合併がある場合は、それらの基礎疾患に対する治療薬で非アルコール性脂肪性肝疾患にも効果が期待されているものがあります。基礎疾患がなければビタミンE(抗酸化剤)も期待できます。
また、非アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎そのものへの治療薬は、肝臓の炎症や線維化(硬くなる)を抑える薬などが我が国をはじめ世界中で現在開発が進められていますが、現時点では実際に効果が認められた特効薬はありません。
薬物療法を選択する場合でも、生活習慣の改善なしで取り組んでもなかなかいい結果が出ませんので、どちらも車の両輪として考えていただきたいと思います。
意外に顧みられていない様子の脂肪肝ですが、結構怖いですよ。地域の健康を担う開業医としては、皆さんに積極的に健康診断や特定健康診査を受けていただき、早め早めに危険の目を積んでいただきたいです。

熱中症大警戒~発火しそうな暑さの中で~

 

こんにちは。気が付いたら毎年夏はものすごい暑さです。私の子供のころは30度超えるとフーフー言って夏バテしていたものですが、今は35度を平気で超えてきますね。室内でも、冷房をかけていても身の危険を感じるほど高温です。
日課のウォーキングも日が昇る前にしないと、直射日光で気分が悪くなってしまう季節になりました。
さて、コロナと熱中症のダブルパンチで、あちらを立てればこちらが立たない状況になってきています。
密を避けられる場所では積極的にマスクを外して、体温を下げましょう。また、お互いのために、大声で話すことは極力控えましょう。
当院でも、梅雨明け前までは換気第一でしたが、いまは冷却と換気を同等に重視して対策しております。また、院内での飲料水の提供は感染防止の観点からウォーターサーバーはおいておりません。お手数ですがスタッフに水が必要であることをお伝えください。患者さんごとに個別に冷えたお水をお渡ししております。ご面倒ですがよろしくお願いします。

今日は熱中症のお話をしようと思います。
先日より、院内の壁掲示も熱中症に集中したものに変えております。ご来院された方はごらんになってください。
さて、熱中症への対策としては
#1 のどが渇いてなくても水分を取ること
#2 だるい 疲れた 汗が止まらない 食欲がないなど 何らかの症状があるときは早めに補液を行う(点滴や経口補水剤をもちいる)
#3 体液の保持を目的とした薬剤(漢方薬)を普段から服用する
などが あげられると思います。
熱中症の代表的な症状としては段階的に
1) めまい ほてり
2) 筋肉痛 筋肉のけいれん
などから始まり
3) 発汗の異常
4) 全身倦怠感 吐き気など
の全身症状が発症し
5) 意識障害
が最終的な段階の症状になります。

1)2)の段階では涼しいところに移動し、十分にからだを冷やして、塩分を含んだ水分をしっかりとる必要があります。


しかし、3)以上になると医療機関での治療が必要になってきますので、とにかくためらわず受診してください。一度の治療でもなかなか元に戻らないことも多いですので、軽く考えずに症状が出た場合はしっかり日にちをかけて治療しましょう。

熱中症予防としては
塩分の入った液体(経口補水剤 OS-1などが望ましい)を常に携帯して、少しづつ飲むことが標準的だとおもいます。
しかし私は、漢方にであってからもう少し違うものを追加提案させていただいています。


漢方薬には清暑益気湯といって、夏バテなどの解消に用いる薬剤があります。この薬剤は生津効果(体内の水分を保持する)があり、その効果を利用して熱中症予防として以前からよく処方させて頂いておりました。こちらは、熱中症になってからではなく、普段から服用されるのがよいと思います。
また、病院に来院される症状を伴う場合は清熱、生津効果のある白虎加人参湯も有効です。
高齢者や子供さんの場合、成人より体温調節機能が低い場合が多いので、より厳重に注意する必要があると思います。


信じられない酷暑の中でも賢く過ごして、熱中症にもコロナにも負けずに夏を乗り切りましょう。

メタボリックな疾患 ~その1 脂質異常症

皆さんこんにちは。
以前に、特定健康診査のお話をいたしましたが、非常事態宣言解除後、当クリニックでも三々五々と患者さん方が受診してくださっているので、地域の健康を預かるものとしてはたいへんうれしいことです。

今回はメタボリックシンドロームのお話をしようと思います。なぜメタボリックの第一弾のお話を超コモンである高血圧にしなかったかというと

どうも毎日診療していて、脂質異常は、比較的患者さんが重要視しておられないような気がしてならなかったからです。

もともと、高コレステロール血症とか高脂血症などと呼ばれてていた脂質異常症ですが、いわゆる善玉コレステロール(HDL-C)が低値である場合も人体には脅威を与えるため、高脂血症という名前だけでは都合が悪いため、名称改定を受けたわけですが、どうも語感のインパクトが弱くなったような気がします。

もともと、自覚症状が出にくい疾患なので(逆にいえば、自覚症状が出るころには遅い!)漫然と治療している感覚に陥りやすく、場合によっては自己判断で治療をやめてしまうこともあります。

特定検診受診時に、脂質異常症の治療をする意味をよく知っていただくのが良いと思いますが、なかなか時間的な余裕もないので、今回は脂質異常症の治療意義をあらためてお伝えするつもりで書きました。

脂質異常症を治療しなければならない理由は、それが心筋梗塞や脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性の疾患につながるからです。上記の疾患だけで総死亡率の約30%を占めています。


早期に治療を行うことで動脈硬化がひきおこす病気の予防が可能になります。また、適切に治療すると動脈硬化性の変化を改善することが可能です。放置するとどんどん動脈硬化は進行します。

特定検診や一般の検査で良く測定されているのがTG(中性脂肪)とHDL-C、LDL-Cです。
後者2つは善玉、悪玉コレステロールと呼ばれています。

いずれにしても、上記の脂質異常症が存在した場合は

① 現在の動脈硬化はどの程度か
② 治療をどうするか

が今後のケアを考えていくうえで重要になります。

① は血圧、
上下肢の血圧比(ABI)、
頸動脈エコー
でそれぞれ動脈硬化の現状を数値的、視覚的に評価するとよいでしょう。
ABIは半年に1回、頸動脈エコーは年1回程度が妥当と考えます。いずれも当院で施行可能です。

また、2次的な脂質異常症も数多く存在しています。例えば
肝機能障害、
甲状腺機能障害、
腎障害、
糖尿病、
飲酒、
ある種の膠原病、
利尿薬
降圧薬(β遮断薬)、
ステロイドなど
によって引き起こされるものが有名です。それらを意識しながら治療へと進みます。

② メタボリック症候群の治療の基本はいつでも
生活習慣と食事習慣の改善
がベースになりますが、私も以前LDL-Cが高くて運動と食事でトライしましたが無理でした。どうしてもきっちり下げていこうとすると薬剤の助けが必要になるようです。
もちろん、どんな治療でもそうですが生活改善なしに薬だけで治療しようとするとなかなか薬剤の効きがよくないので、必ず、食事制限や運動は必要です。

運動に関しては厚労省が提唱している
+10分運動
が取り入れやすいです。普段の生活の中で毎日10分余計に体を動かすことから始めようという試みで、体を動かすことが苦手な方でも無理なく運動負荷できると思います。

食事に関しては細かいことになると栄養士さんにかなわないですが、
卵や牛乳のとりすぎ(卵なら1日1個まで、牛乳なら1日コップ1杯までを目安に)
砂糖、炭水化物のとりすぎ
に注意することは外来でお伝えしています。
またトータルカロリーのコントロールとしては
手ばかり法
が簡単です。待合に掲示していますので来院時にご覧になってください。

治療は薬剤によるものがやはり中心になります。
LDLが高い場合、
LDLとTGが高い場合、
TGだけが高い場合、
HDLが低い場合
それぞれに選択する薬剤が異なります。
副作用としては肝障害と横紋筋融解症が有名で、定期的な血液検査でのフォローが必要ですので、嫌がらずに検査してください。
また妊娠中の女性にはスタチン(LDLを下げる薬)というお薬は催奇形性のため適さないので注意が必要です。
スタチンには糖尿病を増加させるとの報告もありますが1000人に一人程度ですので気にしすぎる必要はないと判断されています。

脂質異常症の予防効果としては、スタチンを用いた治療でLDLが約40低下すると、心臓の冠動脈(心臓の血管、つまると心筋梗塞をおこします)疾患は20%程度の減少、脳卒中は15%程度の抑制が認められます。

管理していくうえでの具体的な数値目標として、正常値を示します。
中性脂肪(TG)は150以下、
LDL-Cは140以下、
HDL-Cは40以上
です。
予防の目標としては、個人のもつリスクによってその目標値は変化します。
リスク設定は年齢や、性別、喫煙歴、高血圧や糖尿病の程度、家族歴などを加味したスコアによって決定されます。
TGの目標はすべてが150以下です。
LDL-Cでは
低リスクの場合のコントロール目標は160以下(検査上の正常値の上限を超えています!)
中リスクの場合は140、
高リスクの場合は120以下です。低リスクでも180以上のLDL-C値が続く場合は投薬を推奨されています。
疾患罹患後の2次的な予防は100以下ですが、冠動脈疾患のある場合はなんと70以下になります。
状況によってまちまちなので、注意してください。

当クリニックでは、外来受診の際にリスク確定のために、治療中の方にもリスク因子のおたずねを行っています。リスク決定は簡易法で主に行い、
5つの危険因子(喫煙、高血圧、低HDL-C血症、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患家族歴)
をもとに年齢と男女差でリスクが決定されます。

以上、脂質異常症の診療概略を書かせていただきました。

当クリニックではできるだけ、ガイドラインに準拠した形で皆様へ医療を提供できるよう心がけています。大病院へ行かなくても、大阪市内に行かなくても身近な場所で日本標準の治療が提供できるよう常に心がけています。

市民健診(特定健康診査)を受けていただきたいこれだけの理由

みなさん、こんにちは。非常事態宣言やっとあけましたね。本当に重苦しかったです。まだまだコロナ第2波への警戒もありますし、気が抜けない毎日ですが、うまく距離感を保ちながら、日常を取り戻していきたいですね。

当院でもいわゆる市民健診である、特定健康診査の受付を始めております。今日は、特定健康診査がどれだけメタボリック症候群に抑止力があるのかをお話ししようと思います。

特定健康診査はメタボリック症候群の発生を抑制するために特化した健康診断です。

少し古い解析データですが、2008年厚労省が行った特定健康診査受診者2000万人から抽出したデータで、審査後指導(検査後のデータをみて生活指導などをうけることです)を受けた方はメタボリック症候群の発症が30%抑制されたという結果があります。
検査の結果を踏まえて、きっちりと治療すれば素晴らしい成果を上げていることがわかります。

特定健康診査対象疾患は、高血圧、脂質異常症(コレステロールの異常、中性脂肪の異常)、糖尿病、高尿酸血症、慢性腎障害です。

  • 最高血圧130mmHg 最低血圧85mmHg以上
  • 中性脂肪150mg/dL以上
  • 空腹時における血糖値110mg/dL以上
  • HDLコレステロール値40mg/dL以下

上に示すのがメタボリック症候群の基準になります。
それではそもそも、メタボリック症候群の何が悪いのでしょうか。
高血圧になる理由の多くは動脈硬化(動脈が固くなること)のため、強い力をかけないからだの隅々まで血液が流れなくなるために起こっています。高い血圧のためさらに血管が損傷したり、ポンプである心臓にも大きな負担がかかることになり、心臓の機能低下につながる可能性があります。
脂質異常は動脈硬化の原因となり、血管が詰まったり固くなったりして、血液の流れが悪くなったり血圧が上がったりします。
糖尿病は小さな動脈が損傷をうけ、血の流れが悪くなりからだの各部の障害を引き起こします。また免疫機能の異常をきたすことも知られており、感染症にかかりやすくなったり、ガンになりやすくなったりします。
高尿酸血症はとても痛い痛風などで知られていますが、それ以外にも狭心症や心筋梗塞、脳卒中を引き起こしやすいという報告があります。
慢性腎障害は比較的新しい概念で、糸球体ろ過量(どれだけ腎臓で老廃物を捨てることができるかということ GFR)と尿中タンパク量で規定されるもので、狭心症、心筋梗塞、脳卒中に影響するとされています。
いずれも三大疾病のうちの二つ、脳卒中と心筋梗塞をターゲットとしており、メタボリック症候群対策はこの二つの撲滅を目標に掲げています。
ちなみに三大疾病のもう一つはがんですが、こちらはがん検診での対応と考えられています。がん検診に関しましては、また機会を改めましてお話したいと思います。

ではそれぞれの疾患がどれくらい影響するか、予防効果はどれくらいのものか、脳卒中を例に数字を示しながらお話していきます。


脳卒中といいますが、脳の血管が詰まる脳梗塞と血管が破綻する脳出血、くも膜下出血に大別されます。突然意識を失って身体がうごかなくなるイメージが強いと思いますが、手足がしびれる、ろれつが回らない、物の見え方がおかしい、ふらふらするなどの症状から始まるものも多いので注意が必要です。特に脳梗塞の場合は、これまでの日本人は動脈硬化性の脳梗塞、つまり脳の血管が固くなったり詰まったりして血液が届かなくなるために起こるものが多かったのですが、心原性脳梗塞(心臓にできた血の塊が脳の血管に飛んで血管が詰まるために起こる脳梗塞、心房細動による血栓が多い)も多くなってきています。
脳卒中の発生頻度は2010年で10万人あたり166人でうち、脳梗塞が107人、脳出血が42人、くも膜下出血が7人です。2011年での概算発症者は29万人で、うち死亡者は12万人です。
脳卒中と関連深いのが、メタボリック症候群の高血圧、糖尿病、脂質異常症です。
まず血圧の関与ですが血圧が5下がると発症率は40%以上低下します。高齢者の場合血圧の低下は脳卒中の危険性を30%低下させますが、あまりの低血圧(最高血圧が100を切るくらいまで抑制しつづけること)は脳血管の血流を下げてしまう可能性もあるので慎重にならなければなりません。
糖尿病はヘモグロビンA1cの厳格すぎる低下を目指すと逆に脳卒中が増加する(低血糖発作頻発のため)ので、昨年のガイドラインでは年齢と全身状態にあった管理が推奨されています。女性の方、血圧の高い方、脂質異常症のある方、喫煙者の方はリスクが上がります。低血糖が発症に悪影響を与えるため、スルホニルウレア剤はできるだけ少量投与を目指されるようになってきています。
脂質異常症に関してはスタチン(LDLコレステロールを下げる薬)の大量投与で発症を30%抑制する報告があります。目安としては中性脂肪(TG)が150以下、LDLコレステロールが160以下が望ましいと考えます。LDLコレステロールが40下がると15%の発症率低下があります。食事療法だけでの完全は困難で、食事療法+薬剤療法の組み合わせで3年後の発症を35%抑制します。特に女性場合55歳以上では53%の抑制効果があります。
以上のように、メタボリック症候群をコントロールすることで大変大きな効果を示すことが示されていますので、そのきっかけになる特定健診は非常に便利で有意義なものであることがお分かりになると思います。しかし、特定健康診査の受診率は全国平均でも50%に満たないもので、特に都市部での受診率は低いものです。せっかくのチャンスを有効利用できていない方がたくさんいることが、医療者として大変気になるところです。
メタボリック症候群は、症状が出るまでは大変【しずかな】病気です。自覚症状はあまりありません。逆に何らかの症状が出てくるときは、ずいぶん病気が進んだ状態になって、コントロールに難渋することが多いです。早めにチェック、早めのケアでより良い人生を送っていただきたいと思います。

免疫力を上げるには 最終回 フレイルとの戦い

全く同じテーマで、延々書きつづっていますが、今回最終回です。

大阪府下も新規のコロナウイルス感染者がぐんと減って、先が見えてきた感じはありますが、緩和による第2波への懸念も消えないため
当院でもまだまだ非常事体制でコロナウイルス対策に取り組んでいきます。

さて、長期の自粛のため屋内に引きこもりがちになっている方も多いように思います。当院への患者さんの足取りも重いものとなっており、本当に息が詰まるような日々を肌で感じさせられています。

ようやく、非常事態宣言が解除されたといってもコロナ危機が去ったわけではありませんので、こんな時には屋外に出かけるのが本当に怖いですが、そのために運動不足になることが大きな問題になってきています。
表題のフレイルですが、脆弱、虚弱という意味で、まさに、いま多くの方が直面している運動不足による心身の虚弱化を表しています。

筋力低下(ロコモティブ症候群、サルコペニアなどという言葉をお聞きになったことがあると思います)が起こることで、活動性が低下し、基礎代謝が低くなり、さらに食事もとれなくなり、また筋力が低下していくという悪循環が形成されフレイルの状態が進んでいくと考えられています。

ひきこもりを余儀なくされ、感染の恐怖のため心身共に疲弊し、フレイルの良くないサイクルの中に引き込まれていき、どんどん食事もとりづらくなってくると、腸管免疫も低下します。
このようなコロナ禍の事態を全く予期していなかったのですが、わたくしは以前より健康生活を送るための筋肉と骨の重要さ、日常の生活の質(ADL)の低下のため免疫力の低下が生じることなどを講演などでお話してまいりました。


当院ではクリニカルモットーとして【いつまでもじぶんのあしであるくために】を掲げていますが、皆さんにフレイルに陥らずに快適な生活を送っていただきたいという強い思いが込められています。筋力低下は最終的に全身機能が低下して寝たきりの状態に至ります。長期臥床状態になると免疫力低下のため感染症によって命が奪われることも多いのです。
厚労省も提案していますが、日ごろのからだの動きプラス10分の運動が健康な毎日につながります。勇気をもって外に出て(もちろんしっかり感染対策をしてください)、10分間でよいので運動をしましょう。
筋肉を使い、骨を強化し、体幹が丈夫になることで日常生活の活動状態(ADL)が向上します。よいADLを保つことがフレイルを防止し、免疫力の低下を極力抑えることにつながるため、意識して運動していただく必要があります。
とにかく運動をしましょう。少しでもいいから身体を動かしてください。そしてしっかり食事をとってください。
コロナウイルスの治療法が未確立である今は、身の回りでできることを懸命にこなしていくことが大切だと考えます。
未曽有の災害をもたらすコロナウイルスに負けない暮らしを、できるところから始めましょう。

免疫力を上げるには~第一回 善玉菌の活用

コロナ感染症一辺倒の毎日になっておりますが、いかがお過ごしでしょうか。コロナ自粛がありストレスも大いに溜まってきているところと思います。

また、ウイルスに対する有効な薬剤やワクチンの開発もまだまだかかりそうな状況で、個人に備わっている免疫力が唯一の頼りである日々はいまだしばらく続きそうです。

 

人体に備わっている免疫を担当する細胞たちの約60%は実は腸の粘膜内に住んでいます。この細胞たちは日々体内に取り込まれてくる異物と腸内で接触して切磋琢磨しており、腸内環境と免疫機能は密接にかかわりあっていることが近年明らかになってきました。
腸内環境で肝心なことは、
1)腸粘膜のコンディション
2)腸内細菌叢の状態
です。
1) は食事をきっちりとることで整えられていきます。病気などでしばらく食事がとれない時期が続くとあっという間に腸管粘膜がうすくなり衰えてしまうことが知られています。それは免疫細胞のすみかがなくなることを意味しており、60%の免疫細胞のすみかを失ったからだは、免疫機能が極端に低下してしまいます。それだけ、口から食事をとることは大事であり、内容はともあれ、できるだけバランスの良い食事をきちんととることが免疫維持に重要な意味をもってきます。
食事は栄養面だけではなく免疫にも関係しているので、健康の基本であることが分かっていただけるとおもいます。

元気な善玉菌のイラスト
2) は、最近よくテレビなどでも取り上げられる【腸活】のトピックです。人間の腸の中には多種多様な細菌が住んでおり(腸内細菌叢といいます)、そのバランスが保たれていることが免疫細胞の働きに重要な役割を果たしています。

腸内細菌叢のバランスを保つのに非常に大きな役割を果たすのが、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌と呼ばれている菌類で、乳製品の発酵食品に入っているものです。皆さんになじみの深いものとしてはヨーグルトであったり、またヤクルトのような乳酸飲料がそれにあたります。これらの善玉菌が産生する乳酸や酢酸が腸内環境を弱酸性に保つことでいわゆる悪玉菌を減らし腸内細菌叢の適切なバランスを保ちます。

善玉菌投与の効果は科学的にも実証されており、例えばインフルエンザにかかりにくくなったり、その症状の軽快につながる、または、ノロウイルスによる腸炎の症状を軽くしたりするという結果が報告されています。

善玉菌を摂取するだけでなく、善玉菌の生育環境を整える手法があります。善玉菌をより効果的に活躍させるためには、食物繊維をたくさんとること(野菜をたくさん食べましょう)と、摂取する糖分を善玉菌のごはんであるオリゴ糖に変えてやることがよいとされています。

善玉菌+食物繊維+オリゴ糖はよりよい腸内環境の方程式です。その答えは免疫強化として現れてきます。明日からでもできる免疫強化法ですのでぜひ取り組んでみてください。興味を持たれた方は、外来でご説明いたしますのでお声掛けください。

皆さんも、腸内環境を整えて、免疫力の強化を行いましょう。ちなみに、コロナ自粛でストレスをためるのは免疫にマイナスに働きますので、上手にストレスをかわす方法も考えてくださいね。

第二回 漢方薬の効用へとつづきます。