治療中の方が感じる5つの疑問
骨粗しょう症のお薬を飲み始めて、もう何年にもなる。
毎回きちんと病院に通って、お薬も欠かさず飲んでいる。
それでも、ふとこんなふうに思ったことはありませんか。
- 「お薬は飲んでるけど、骨密度はしばらく測ってへんなぁ」
- 「何年も同じ薬やけど、このままでほんまにええんかな」
- 「ちゃんと飲んでるのに、骨密度が増えへんのはなんでやろ」
- 「骨粗しょう症の薬がいくつもあるけど、全部いるんかな」
- 「骨密度以外の検査も必要なんかな」
骨粗しょう症の治療で大切なのは、ただお薬を続けることだけではありません。
今の骨がどんな状態なのか。これまでどんな治療を受け、その間に骨密度がどう変わってきたのか。
治療を続けているからこそ、ときどき「今どこにいるのか」を確かめることが大切です。
今回は、長く骨粗しょう症の治療を続けておられる患者さんからよく聞く疑問を、一つずつ考えてみたいと思います。
1.「お薬は飲んでるけど、最近骨密度を測ってません」
「骨粗しょう症のお薬は毎回ちゃんともろてます」
そうお話しされる患者さんに詳しく伺ってみると、
「そういえば、骨密度を測ったのは何年も前やった」
ということがあります。
お薬をきちんと続けることは、もちろん大切です。
ただ、お薬を飲んでいるというだけでは、今の骨がどうなっているのかまでは分かりません。
治療を始めたときの骨密度はどうだったか。その後どう変わってきたか。治療中に新しい骨折はなかったか。
こうした経過を確認することが、これからの治療を考える大切な材料になります。
当院では、必要な方にはDEXA(DXA)法による骨密度検査で、腰椎と大腿骨(脚の付け根)の骨密度を測定しています。
検査をすること自体が目的ではありません。
「今の骨がどうなっているか」を確かめ、その結果を次の治療につなげること。
そこが大切です。
2.「ずっと同じ薬やけど、このままでええんでしょうか」
何年も同じお薬を飲んでいると、
「このままずっと同じ薬でええんかな」
と気になることもあると思います。
長く同じ薬を使っていること自体が、問題というわけではありません。
反対に、「長く飲んだから別の薬に変えたほうがいい」と単純に決められるものでもありません。
大切なのは、
- 今の骨密度と、これまでの変化
- 治療中に新しい骨折がなかったか
- 年齢や体の状態
- これまでどのような治療を受けてきたか
などを確認することです。
「今、何を飲んでいるか」だけではなく、「これまでどんな治療をしてきたか」まで含めて考える。
骨粗しょう症では、この治療歴がとても大切です。
3.「お薬を飲んでるのに、骨密度が増えません」
きちんと治療しているのに、骨密度を測ってみると、
「あんまり変わってへん」
「思ったより増えてない」
となれば、「この薬、効いてへんのかな」と心配になるかもしれません。
ただし、骨密度が増えていない=薬が効いていない、とは限りません。
骨密度が大きく減らず、維持できていることにも意味があります。
また、骨粗しょう症のお薬には、骨が壊れていくのを抑えるタイプと、骨をつくる働きを高めるタイプなどがあります。
そして実際の治療では、どのお薬を使うかだけでなく、どのような順番で治療してきたかも重要になります。
以前に受けていた治療によって、その後のお薬に対する骨密度の変化が違ってくることもあります。
最近では、骨折する危険性が特に高い方では、治療の早い段階から骨をつくる働きを高める薬を使う、という考え方もあります。
だからこそ、今の骨密度の数字だけを見て、
「増えてないからダメ」
「別の薬に変えればいい」
と単純に判断するのではなく、これまでの治療の流れと現在の状態を一緒に見直すことが大切です。
4.「骨粗しょう症の薬がいくつかあります。全部いるんでしょうか」
お薬手帳を見せていただくと、骨粗しょう症に関係するお薬が何種類か処方されていることがあります。
複数のお薬を使っているから問題、というわけではありません。
骨に働きかけるお薬に加えて、カルシウムやビタミンDに関係するお薬などを組み合わせることもあります。
大切なのは、
- それぞれ何のために使っているのか
- どういう経緯で今の処方になったのか
- 同じような働きのお薬が重なっていないか
を確認することです。
特に、複数の医療機関で治療を受けている場合などには、処方全体を一度整理してみることも大切です。
ご自身の判断でお薬を中止するのではなく、
「この薬は何のために飲んでいるんやろ?」
と思ったら、主治医や薬剤師に確認してみてください。
5.「骨密度以外の検査もいるんでしょうか」
骨粗しょう症というと、「骨密度を測って薬を決める」というイメージが強いかもしれません。
しかし、骨が弱くなる理由は人によって違います。
年齢や閉経だけではなく、糖尿病や甲状腺の病気、腎機能の低下、カルシウムのバランス、服用しているお薬などが関係していることもあります。
そのため必要に応じて血液検査や尿検査を行い、
「骨が弱くなる別の原因がないか」
「治療が適切に行われているか」
を確認します。
この点については、別の記事
「骨粗しょう症の治療前に、なぜ血液検査をするの? ― 骨密度だけではわからない『骨が弱くなる背景』」
でも詳しくご紹介しています。
今まで他の医院にかかっていた方も、ご相談ください
長く骨粗しょう症の治療を続けてこられた方から、
「今まで別の病院にかかってたんですけど、相談してもいいんでしょうか」
と聞かれることがあります。
もちろん大丈夫です。
これまでの治療を否定したり、最初からやり直したりするためではありません。
今まで使ってこられたお薬には、それぞれ選ばれた理由があります。
大切なのは、過去の治療をリセットすることではなく、これまでの治療を引き継いだうえで、今後を考えることです。
受診される際には、お手元にあれば、
- お薬手帳
- これまでの骨密度検査の結果
- 血液検査・尿検査の結果
- 過去の治療内容が分かる資料
などをお持ちください。
少し古いものでも、これまでの経過を知る大切な手がかりになります。
骨粗しょう症治療は、「お薬をもらい続けること」がゴールではありません
骨粗しょう症治療の目的は、お薬を飲むことでも、骨密度の数字だけを増やすことでもありません。
これから起こるかもしれない骨折を防ぎ、できるだけ長く自分の足で生活していただくこと。
それが治療の目的です。
「最近、骨密度を測っていない」
「何年も同じ薬を飲んでいる」
「治療しているのに骨密度が増えない」
「今飲んでいる薬が何のためなのか、よく分からない」
そんな疑問があれば、一度これまでの治療を振り返ってみてもよいと思います。
これまでの治療歴と、今の骨の状態を整理する。
そこから、これからの骨粗しょう症治療を考えていきましょう。
