― 骨密度だけではわからない「骨が弱くなる背景」
「骨密度が低いと言われたから、骨粗しょう症のお薬を飲めばいい」
そう思われる方も多いのではないでしょうか。
けれども骨粗しょう症の診療では、骨密度の数字だけでなく、**「なぜ骨が弱くなったのか」**という背景に目を向けることも大切です。
骨が弱くなる原因は、加齢や閉経だけとは限りません。
糖尿病や甲状腺などの内分泌の病気、腎機能の低下、服用しているお薬など、骨に影響するさまざまな要因が隠れていることがあります。
こうした背景を確かめることは、お一人おひとりに合った治療を考えるための大切な第一歩になります。
「年齢のせい」だけでは片づけられない骨粗しょう症
年齢とともに骨粗しょう症が増えることは、よく知られています。
しかし、ほかの病気やお薬などが背景となって骨が弱くなっていることもあり、これを**「続発性(二次性)骨粗しょう症」**と呼びます。
そのため骨粗しょう症の治療を考える際には、骨密度だけを見るのではなく、必要に応じて血液検査などを行い、骨に影響する問題が背景にないかを確認していきます。
糖尿病と骨、実は深くつながっています
糖尿病と聞くと、血糖値やHbA1cを思い浮かべる方が多いかもしれません。
ところが糖尿病は、骨折のリスクとも関係していることが分かっています。
ここで気をつけたいのは、骨密度の数字だけでは、骨折のリスクを十分に捉えきれない場合があるということです。
そのため糖尿病のある方では、骨密度に加えて、これまでの骨折歴や年齢、転倒しやすさなども含めて総合的に考えていくことが大切です。
「骨密度はそれほど低くないから大丈夫」と、数字だけで判断しないことも重要です。
甲状腺などのホルモンと骨の関係
骨は、ホルモンの影響を受ける組織でもあります。
たとえば甲状腺機能の異常や、副甲状腺ホルモン(PTH)の異常などが、骨に影響を及ぼすことがあります。
そのため骨粗しょう症の背景を確認する際には、患者さんの状態に応じて、甲状腺機能やカルシウム代謝などを調べることもあります。
「骨の病気なのに、どうして甲状腺まで調べるの?」
と不思議に思われるかもしれません。
ですが骨は、全身の代謝やホルモンのバランスと深くつながっているのです。
腎臓も、骨の健康と関係しています
年齢を重ねるにつれて、腎機能が低下している方も少なくありません。
腎臓は単に尿をつくる臓器ではありません。カルシウムやリン、ビタミンD、副甲状腺ホルモンなど、骨の健康に関わる仕組みとも密接につながっています。
慢性腎臓病(CKD)が進行すると、こうしたバランスに変化が生じ、骨にも影響が及ぶことがあります。
そのため、骨粗しょう症の治療を考える際には、腎機能を確認することにも意味があります。
腎機能が大きく低下している場合には、一般的な骨粗しょう症だけでなく、CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常について考える必要がある場合もあります。
なぜ、治療の前にいろいろと調べるのでしょうか?
理由はシンプルです。
骨を弱くしている背景があるなら、その背景にも目を向ける必要があるからです。
骨密度だけを見て治療を始めても、骨に影響を与えている別の問題がそのまま続いていれば、期待した治療効果が十分に得られないことがあります。
だからこそ、
「骨密度がいくつだったか」
だけでなく、
「なぜ、この方の骨は弱くなったのだろう?」
と考えることが大切です。
血液検査などは、その手がかりを探すために行います。
骨粗しょう症は、「骨だけ」の問題とは限りません
骨粗しょう症は、加齢とともに増えていく病気です。
しかし、そのすべてを「年齢のせい」で片づけてしまうことはできません。
糖尿病、甲状腺などの内分泌、腎機能、カルシウムやリンといった代謝、そして服用しているお薬――骨に影響を与える背景は、人によってさまざまです。
もちろん、すべての方に同じ検査が必要というわけではありません。
年齢や骨折歴、持病、服用中のお薬、骨密度などを確認しながら、お一人おひとりに必要な評価を考えていきます。
羽曳野は坂道や段差も多く、転倒による骨折を心配される患者さんの声をお聞きすることがあります。
だからこそ当院では、骨密度の数字だけではなく、**「なぜ骨が弱くなったのか」**という背景にも目を向けながら、骨粗しょう症の診療を行っています。
