糖尿病なのに、なぜ眼科に行くの?

― HbA1cが良くても「目は大丈夫」とは限りません

水曜日は内科のお話です。

今月のテーマは「糖尿病」。

今日は少し意外に思われるかもしれませんが、糖尿病と眼科についてお話しします。

「糖尿病で内科に通っているのに、どうして眼科にも行かないといけないの?」

そう思われる方もいらっしゃるでしょう。

実はここに、糖尿病という病気を理解するうえで、とても大切なポイントがあります。

糖尿病は「血糖値だけの病気」ではありません

糖尿病というと、

「血糖値が高くなる病気」

「HbA1cを下げる病気」

というイメージが強いと思います。

もちろん、血糖値を適切に管理することはとても大切です。

しかし、私たちが糖尿病を治療する本当の目的は、血糖値という数字だけを良くすることではありません。

高い血糖が長く続くと、全身の血管や神経が少しずつ傷んでいきます。

その影響は、目だけにとどまりません。

血管や神経のダメージは、脳や心臓、腎臓、足など、全身のさまざまな場所に及ぶ可能性があります。

なかでも、目の網膜にある細い血管が傷むことで起こる代表的な合併症が「糖尿病網膜症」です。

糖尿病では、細い血管などが傷むことで起こる合併症として、

網膜症・腎症・神経障害

の3つがよく知られています。

いわゆる糖尿病の三大合併症です。

糖尿病で守りたいのは、HbA1cという数字そのものではありません。

自分の目で見ること。
自分の足で歩くこと。
体の働きを守ること。
そして、これまで通りの生活を続けること。

そのために血糖値を管理しているのです。

「HbA1cが良いから大丈夫」とは限りません

ここは、糖尿病を診療している私自身も気をつけているところです。

HbA1cが目標範囲に入っていることは、とても大切です。

しかし、「HbA1cが良い」ことと「合併症がない」ことは、必ずしも同じではありません。

糖尿病は長い経過をみていく病気です。

現在のHbA1cが落ち着いていても、それだけで、これまでの糖尿病による影響や現在の合併症の有無まで判断することはできません。

長く糖尿病診療をしていると、血糖値が比較的落ち着いている患者さんでも、検査をして初めて合併症が見つかることを経験します。

血糖値の数字が良いことに、安心しきらない。

これは患者さんだけに申し上げているのではありません。

糖尿病を診る私自身への戒めでもあります。

とくに「目」は、自覚症状だけでは分かりません

糖尿病網膜症で注意したいのは、初期には自覚症状がほとんどないことです。

「よく見えているから大丈夫」

「目に困っていないから、眼科には行かなくてもいい」

とは限りません。

内科でHbA1cを測っても、網膜の状態そのものを確認することはできません。

だから眼科で、目そのものを診てもらう必要があります。

症状が出てから眼科へ行くのではなく、症状がない段階から確認しておく。

これが大切です。

内科と眼科の連携が、これからますます大切になります

国としても、糖尿病の患者さんの重症化を防ぐため、糖尿病を診る医療機関と眼科との連携を後押ししています。

制度の細かい話より、大切なのはその背景です。

糖尿病を内科だけで診るのではなく、必要に応じて眼科と連携し、網膜症を早い段階から確認していく。

その大切さが、あらためて見直されています。

内科で「一度、眼科で診てもらいましょう」と言われたら

「目は何ともないのに、どうして?」

と思われるかもしれません。

でも、何ともない時に確認することにこそ、意味があります。

血糖値を診る内科と、実際に目を診る眼科。

それぞれが役割を分担しながら、患者さんの目を守っていく。

これも糖尿病治療の大切な一部です。

糖尿病の治療目標は、検査表にきれいな数字を並べることではありません。

5年後、10年後も、見える。歩ける。自分らしい生活を続けられる。

そのための血糖管理であり、そのための合併症チェックです。

HbA1cが良い方も、安心してそこで終わりにせず、

「最近、眼科で目を診てもらったかな?」

一度、思い出してみてください。