糖尿病と運動―たくさん歩けばいいのでしょうか?

糖尿病の患者さんに、

「運動をしましょう」

とお話しすることがあります。

すると、

「毎日1万歩くらい歩いた方がいいですか?」

と聞かれることがあります。

もちろん、身体を動かすことは大切です。

しかし私たちは、**「健康のためなら、歩けば歩くほどよい」**とは考えていません。

特に膝や腰などに痛みのある方が、歩数だけを目標にして無理をすることには注意が必要です。

なぜ糖尿病で運動が大切なのでしょう?

糖尿病の運動というと、「カロリーを消費するため」と考える方が多いかもしれません。

それだけではありません。

年齢とともに筋肉量が低下すると、身体を動かす力も少しずつ低下していきます。

筋肉は身体を動かすだけでなく、血液中の糖を取り込んで消費するうえでも重要な組織です。

そのため、糖尿病の方にとっても、

「筋肉をできるだけ維持して、これからも動ける身体を保つこと」

はとても大切です。

運動は、一時的にたくさん行うことよりも、無理なく続けていくことを考えましょう。

いきなり「1万歩」を目指さなくても構いません

「運動しなければ」と思うと、急に歩く距離を増やしたくなるかもしれません。

しかし、今まであまり運動していなかった方が、いきなり大きな目標を立てる必要はありません。

厚生労働省でも、**「今よりも少しでも多く身体を動かす」**という考え方が示されています。

まずは、

「今より10分多く身体を動かしてみる」

そんなところから始めてもよいでしょう。

大切なのは、数字を達成することではなく、身体を動かす習慣を続けていくことです。

膝が痛いのに歩き続けていませんか?

ここは特にお伝えしたいところです。

「糖尿病があるから運動しなければならない」

「健康のために歩かなければならない」

そう考えて、膝が痛いのに無理をして歩いている方がいらっしゃいます。

当院でも「膝の痛み」についてご相談を受ける機会が多いですが、膝に痛みがある方まで、歩数だけを目標にする必要はありません。

運動の目的は、歩数を競うことではありません。

筋肉や身体機能を保ち、これからも自分の足で動ける身体を維持すること。

こちらの方が大切だと私たちは考えています。

痛いときは、しっかり休みましょう

そして、もう一つ大切なことがあります。

痛みを我慢してまで運動を続ける必要はありません。

膝などに痛みが出たときは、無理をせず、痛みを悪化させる運動はいったん休むことも大切です。

「休んだら筋肉が落ちてしまう」

「運動をさぼっているようで不安」

と感じる必要はありません。

身体の状態をみながら休み、痛みが落ち着いたら、また無理のない範囲から身体を動かしていきましょう。

痛みが続く場合や、運動を再開すると繰り返し痛む場合には、一度原因を確認した方がよいこともあります。

「運動する」と「身体を守る」を両立させましょう

これは糖尿病の患者さんだけの話ではありません。

膝や腰などの症状で整形外科に通院している方にも共通します。

  • 動かなさすぎない
  • 歩きすぎない
  • 筋肉をできるだけ維持する
  • 痛いときは無理をしない

大切なのは、たくさん歩くことではなく、自分の身体に合った運動を長く続けることです。

「何歩歩けばいいですか?」だけではなく、

「自分の身体なら、どのくらいの運動を続けられるだろう?」

そんな視点で、ご自身の運動を一度見直してみてください。